羽生 大差V2、完全復活の舞 完璧4回転連発「I did it」
フィギュアスケートGPファイナル最終日
(12月13日 スペイン・バルセロナ)
金字塔とともにプリンスが完全復活だ。ソチ五輪男子金メダリスト・羽生結弦(ゆづる、20=ANA)が今季世界最高、自己2番目の合計288・16点で日本男子初の連覇を達成した。2種類の4回転ジャンプを完璧に決めたフリーは、世界歴代2位で自己ベストの194・08点をマーク。合計で2位のハビエル・フェルナンデス(23=スペイン)に34・26点の大差をつけて圧勝した。無良崇人(23=HIROTA)は235・37点で5位。SP2位の町田樹(24=関大)は216・13点で6位に終わった。
こんな羽生をみんなが待っていた。中国杯の練習での激突事故から1カ月余り。シーズン前半の大舞台で五輪王者の真価を示した。日本男子初の連覇。地元の声援を浴びた2位のフェルナンデスに34・26点差の圧勝だ。演技後、息が整わない中、場内で受けたインタビュー。12年からカナダ・トロントに拠点を移し、英語も上達中のプリンスは心の底から笑っていた。
「I did it!I did it!(やったぜ)Almost perfect!(ほぼ完璧)」
力強いファントムが舞い降りた。「オペラ座の怪人」に乗って、冒頭に挑んだ4回転サルコーは「初めてこんなにきれいに跳んだ。跳んだ瞬間、“きた!”と思った」と自画自賛。4回転トーループも完璧で、この2つのジャンプだけで5・14点もの加点を稼いだ。基礎点が1・1倍になる演技後半の2度のトリプルアクセル(3回転半)も成功。「ちょっと気が緩んだ」という最後の3回転ルッツで転倒したが、起き上がる際には笑みも浮かぶ。演技後は派手なガッツポーズを見せた。
「自分の演技ができたことの方が(連覇よりも)うれしい。チーム、関係者、観客、世界中のフィギュアファンに“ありがとう”と伝えたい」
氷上で羽生の脳裏を巡ったのは「幸せ」と「感謝」だった。「体を駆使できる、最後まで存分に使える幸せ」。中国杯の負傷はほぼ癒えたが、今大会は持病の腰痛という別の悩みを抱えていた。睡眠中の悪化を防ぐためのマットレスや患部のテーピングは手放せない。オーサー・コーチから渡された練習メニューも過酷だった。「練習に耐えた自分の体にも感謝しないと」。命の危険を感じた1カ月前の事故ですら、今は前向きに捉えている。
「(中国杯の)アクシデントが五輪の次のシーズンで良かった。誰もが経験できるわけじゃない。この状況に陥った中でどう練習したらいいかをつかみ、周りの支援を実感できる機会になった」
ファイナル連覇で完全復活を遂げたが、完成するのはまだ先だ。「ほぼパーフェクトになったのは大きな進歩だけど、まだ4回転トーループを(演技)後半に入れられていない」。SP、フリーで理想の演技をそろえれば、史上初の合計300点超えも視界に入る。次戦は3連覇が懸かる全日本選手権(26日開幕、長野)。7日に20歳の誕生日を迎えた。大人になったプリンスが、20代も黄金の進撃を続ける。
▼日本スケート連盟小林芳子フィギュア強化部長 フリーの内容は完璧に近い。ファイナルに滑り込んでの2連覇。才能があって気持ちも強い。しばらく無敵だと思う。
【羽生記録アラカルト】
★ファイナル連覇 プルシェンコ(ロシア)、チャン(カナダ)に次いで史上3人目、日本男子では初めての快挙。日本勢は12年の高橋大輔から3連勝となった。女子ではスルツカヤ(ロシア)が3連覇、浅田真央(中京大)は昨季まで連覇していた。
★得点 今大会の合計288.16点は昨年のファイナルの293.25点に次ぐ自己2番目のスコア。フリーでマークした194.08点は自己ベスト。羽生は合計280点超えが自身4度目となり、チャンの3度を上回り世界最多に。
★五輪翌シーズンの勝利 10年バンクーバー五輪優勝のライサチェク(米国)、06年トリノ五輪を制したプルシェンコ(ロシア)は五輪翌シーズンは試合に出場せず。02年ソルトレークシティー五輪金メダルのヤグディン(ロシア)は同年秋のスケートアメリカに出場したが、途中棄権した。五輪金メダリストが翌シーズンのGPを制したのは初めて。
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