七戸銀!100キロ超級新エースだ 王者リネールに大健闘

[ 2014年8月31日 05:30 ]

男子100キロ超級準決勝 ブラジル選手(下)を破り、決勝進出を決めた七戸龍

柔道世界選手権

(8月30日 ロシア・チェリャビンスク)
 個人戦最終日で男女3階級を実施した。男子100キロ超級では世界ランク8位の七戸龍(25=九州電力)が、この階級では05年カイロ大会の棟田康幸以来となる決勝に進出。王者テディ・リネール(フランス)には指導3で敗れたが、大内刈りで横倒しにするなど大健闘の銀メダルとなった。上川大樹(24=京葉ガス)は3回戦で敗退した。女子78キロ超級は田知本愛(25=ALSOK)が2大会連続の銅メダル。初出場の山部佳苗(23=ミキハウス)は7位に終わった。

 最後まで攻めたのは七戸だった。この階級5連覇中のリネールを試合開始早々、大外刈りでぐらつかせる。指導3をリードされた残り35秒では得意の大内刈りで王者を横倒しにした。結局ノーポイントで逆転はならなかったが、初対戦の昨年2月はわずか13秒で一本負けした相手。「大会前は最低でもメダルと思っていたけど、決勝で負けたことは単純に悔しい」と汗を拭ったが、試合終了の瞬間、6連覇達成の王者に笑顔がなかったことが、試合内容を如実に物語っていた。

 ロンドン五輪イヤーの12年4月、全日本選抜体重別を制し、重量級のホープに躍り出た。だが、初出場となった昨年の世界選手権は7位。全日本合宿に参加するたびに、重圧から体調を崩す精神的弱さが浮き彫りになった。極真空手の日本王者だった父・康博さんから受け継いだ力強さと、ベルギー人の母・ベラさんからもらった長い手脚の無限の可能性を、発露できずにいた。

 だが、今年に入り一変した。2月のグランドスラム・パリ大会をオール一本で制覇。「重圧に慣れてきたのか、体調不良がなくなった。自分で練習内容を決めるようになったし、貪欲になってきた」と担当の鈴木桂治コーチ。4月には九州電力の計らいで東京支社勤務となり、地元福岡時代に比べ練習パートナーも豊富になったことも、成長を加速させた。

 今年5月10日に、大学時代から4年半交際していた女性と結婚。妻の上京する年末までは単身赴任状態だが「リオに連れて行ってほしい」という言葉が、何よりの発奮材料だという。「リネール選手には一発の技で勝負したかった。以前よりも戦えると思ったし、隙がないこともない。五輪までに突き詰めていきたい」と前を向いた25歳。銀色の輝きが最重量級の新エース誕生を告げるとともに、2年後に大きな期待を抱かせてくれた。

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2014年8月31日のニュース