孝行娘だ酒井 プレー費のため父手放したポルシェを獲得

[ 2014年6月30日 05:30 ]

優勝副賞のポルシェの前でガッツポーズする酒井美紀(中)(左は姉・美香さん、右は父・正孝さん)

女子ゴルフツアーアース・モンダミン・カップ最終日

(6月29日 千葉県袖ケ浦市 カメリアヒルズ・カントリークラブ=6516ヤード、パー72)
 プロ5年目の酒井美紀(23=国際スポーツ振興協会)が歓喜の初優勝を達成した。首位から出ると、4バーディー、1ボギーの69で回り、通算17アンダーで並んだアン・ソンジュ(26=韓国)とのプレーオフに突入。18番パー5を使ったプレーオフ2ホール目で、アンは第1打を池に入れてパーパットを外したが、酒井はパーセーブして決着をつけた。

 18番パー5を使ったプレーオフ2ホール目。酒井は50センチのウイニングパットを沈めると、感極まり肩を震わせた。3月のヨコハマタイヤPRGRレディースではプレーオフに敗れて2位。流した悔し涙をうれし涙に変え「最後のパットが長く感じた。やっと優勝できた」と声を詰まらせた。

 前の組のアンが正規ラウンドの18番でイーグルを奪い、土壇場で並ばれた。それでも気持ちは切らさず「これまでの優勝争いではパターを打ち切れなかったが、きょうは引かないように」と18番は4メートルのバーディーパットを沈めにかかった。結果的には50センチオーバーしたが「オーバーは良しとした」と前向きに捉えてプレーオフにつなげた。

 支えられて今がある。約10年前、父・正孝さん(60)は娘のため、愛車ポルシェを手放してプレー費を捻出した。大会2日目終了後は正孝さん、姉でキャディーの美香さん(30)と成田山に出掛け、3人で「とにかくツキを」と参拝。第3日は6番で20メートルのバーディーパットを沈めるなど“御利益”があったのか、初優勝までつかみ取った。副賞はポルシェ。正孝さんは「感無量です。手放したポルシェを娘が取り返してくれた」。昨年10月に台風で愛車が水没する被害にも遭っただけに喜び倍増だ。くしくもこの日は4年前に制した日本女子アマで同じ福島出身の蛭田が優勝。「会えばしゃべる仲。父同士が仲良くて」と明かす後輩とのアベックVで震災に苦しんだ故郷を勇気づけた。

 いろいろな意味でうれしかった初優勝だが、当の本人はどこかソワソワしていた。「東京ドームで(午後5時から)嵐のイベントがあるんです。優勝は考えていなかったので、間に合うかなと思っていて…」。プロゴルファーといっても素顔はアイドルグループが好きな23歳だ。千葉から東京へ。開場時間には間に合わない時間だったが「グッズだけでも買いに行きます」と駐車場に向かう足取りは軽やかだった。

 ◆酒井 美紀(さかい・みき)1991年(平3)5月24日、福島県いわき市生まれの23歳。8歳の時にゴルフを始める。07年全国中学選手権や10年日本女子アマで優勝して、10年8月にプロ転向。得意クラブはドライバー。1メートル65、78キロ。血液型A。趣味は嵐と関ジャニ∞のグッズ集め。家族は両親と兄・豊勝さん(32)、姉・美香さん(30)、弟・正晴さん(21)の4人きょうだい。

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2014年6月30日のニュース