“人種差別”オーナー 永久追放&罰金2億5500万円

[ 2014年5月1日 05:30 ]

昨年10月25日のクリッパーズ戦を観戦するスターリング・オーナー。NBAは左の女性との会話を録音したとされるテープでの人種差別発言で永久追放となった

NBAプレーオフ西地区1回戦 クリッパーズ113―103ウォリアーズ

(4月29日)
 NBAのアダム・シルバー・コミッショナー(52)は29日、人種差別発言で渦中の人となっているクリッパーズのドナルド・スターリング・オーナー(80)に対し、規定最高額となる250万ドル(約2億5500万円)の罰金を科した上で永久追放を通告した。北米4大プロスポーツでは過去に例を見ない最大級の処分。これを受けてクリッパーズはウォリアーズと対戦し、ファンの大声援を受けて勝利を収めた。なおウィザーズは9年ぶりに1回戦を突破。グリズリーズは4戦連続の延長戦を制して3勝2敗とした。

 シルバー・コミッショナーは「リーグという存在はどんなオーナーよりも大きい。全員がスターリング氏の見解を排除することで団結している」と厳しい口調で語り、過去のどのリーダーも行使しなかった強権を発動。罰金と追放を通告した上で、スターリング・オーナーにチームを売却するように勧告した。

 この日はクリッパーズの本拠地ロサンゼルスのステイプルズセンターの外で多くのファンが「新たなオーナーを!」というプラカードを掲げてデモ行進。選手会も「適正な処分がない場合にはプレーオフをボイコットする」と圧力をかけていた。その声をくみ取っての処分とあってク軍のドック・リバース監督(52)は「コミッショナーはやるべきことをやってくれた。選手に伝えたらみんないい表情になってくれた」と納得の表情。今回の事件で差別の対象となった大リーグ・ドジャースのマジック・ジョンソン共同オーナー(54=元レイカーズ)も「彼は素晴らしいリーダーだ」とまだ2カ月しか経験のない新米コミッショナーの処分を“英断”だと評価した。

 ただし、クリッパーズの将来は不透明だ。FOXテレビによるとスターリング・オーナーは売却勧告を拒否。売却の手続きを行うには全筆頭オーナー(30人)の4分の3の同意(22票もしくは23票)が必要で、AP通信によれば16人が賛成で8人が回答を保留している。ク軍はこの日の勝利で西地区準決勝進出に王手をかけたが、悲願のファイナル初出場にはまだ多くの関門が残されている。

 ▽事件経過 スターリング・オーナーは31歳の知人女性に「黒人との付き合いを吹聴するな。イスラエルなら彼らは犬同然。試合にも連れてくるな」と語り、この会話が録音されてゴシップ系サイトTMZへ投稿された。この女性はM・ジョンソン氏と一緒の写真を写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿した件でも同オーナーからとがめられていた。ただし、自身が録音したことは否定。今回の処分に弁護士を通じて「そんな処分は望んでいなかったので残念」というコメントを出し、同オーナーの愛人ではないことも主張した。

 ◆ドナルド・スターリング 1934年4月26日、シカゴ出身の80歳。不動産業を営みながら81年にクリッパーズを1250万ドルで買収。現在の資産価値はNBA30チーム中18位の5億7500万ドル(約587億円)で、自身の資産は推定で19億ドル(約1940億円)。ロシェール夫人との間に3人の子供がいる。

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2014年5月1日のニュース