桐生 決勝棄権も9秒台見えた 全力出さずに予選で10秒10

[ 2014年4月30日 05:30 ]

織田記念国際男子100メートル決勝を10秒13で優勝した高瀬慧男子100メートル予選で10秒10を記録した桐生祥秀(右)。決勝は棄権した

陸上織田記念国際

(4月29日 エディオンスタジアム広島)
 ワンダーボーイが9秒台のポテンシャルを見せつけた。男子100メートル予選1組で桐生祥秀(18=東洋大)が、10秒10(追い風2・0メートル)の自己2番目の好タイムをマーク。決勝は右太腿裏の違和感で棄権したが、予選はスタートで出遅れた上にレース中に患部に張りを感じ、最後は流してのフィニッシュだった。次戦は予定通りゴールデングランプリ(5月11日、国立競技場)に出場し、日本初の9秒台を狙う。

 決勝のスタートラインに桐生の姿はなかった。予選を10秒10のトップで通過したワンダーボーイは右太腿裏の違和感を訴え、ウオーミングアップを行ったものの、レース直前に棄権を決断。「タイムを期待されたり応援してもらっているのもあったけど、無理してシーズンを棒に振るのは怖かった」。悔しさは表情に出さず、不祥事の謝罪会見のように無数のフラッシュを浴びると「なんか(悪いことを)やってしまったみたいじゃないですか~」と笑みを浮かべていた。

 丸刈りの高校生が日本歴代2位の10秒01をマークしてから、ちょうど1年。ソフトモヒカンの大学生になっても、秘めたポテンシャルは変わらない。「苦手じゃないけど、得意じゃない」というスタートは、明らかに出遅れた。加速して中盤で抜け出したが、60~70メートル付近で右太腿裏が気になったという。ラストも流してのフィニッシュだった。全力でのアタックではなかった中で、自己2番目の記録をマーク。「セカンドベストはプラスに考えて、この先もっと良くなれば」と確かな手応えを得た。

 30日に精密検査を受けるが、軽症とみられる。次戦はゴールデングランプリに出場。昨夏の世界選手権銀メダル・ガトリン(米国)、白人初の9秒台をマークしたルメートル(フランス)も参戦する。桐生を指導する土江コーチは「桐生の特長として、記録の出そうな試合に臨む時にリミッターが外れる」と説明。世界の強豪と激突する上に、同大会は決勝のみの一発勝負で集中しやすい。今の国立競技場で行われる、陸上で最後の国際大会。ワンダーボーイが潜在能力を解き放った時、歴史的瞬間が訪れる。

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