白鵬、遠藤を子供扱い 29歳バースデー白星で被災地に勇気

[ 2014年3月12日 05:30 ]

白鵬(上)に送り倒しで敗れた遠藤

大相撲春場所3日目

(3月11日 ボディメーカーコロシアム)
 白鵬が注目の若手・遠藤を送り倒して、3戦全勝と調子を上げてきた。東日本大震災から丸3年の11日は自身の29回目の誕生日。被災地の復興を祈りながら、土俵上では横綱らしい相撲で観客の期待に応えた。綱獲りに挑む鶴竜は隠岐の海に押し出され、痛い黒星を喫した。休場明けの日馬富士は玉鷲を危なげなく退け、こちらも3連勝となった。
【3日目取組結果】

 遠藤は特別な日にふさわしい相手のはずだった。しかし、ふたを開ければ役者が違った。東日本大震災から3年。白鵬は29回目の誕生日でもある“3・11”の土俵で、当然のように主役を務めた。立ち合い、強烈な右張り手で相手の出足を止め、いなしながら押しつぶすように送り倒した。「若手の期待の星。勢いがありますから」と“昇り竜”の幕内筆頭を子供扱いして、力の違いを見せつけた。伊勢ケ浜審判部長(元横綱・旭富士)は「力の半分も出していない」と評した。

 表情一つ変えずに引き揚げてきた支度部屋。当然の白星よりも被災地への思いが多く口をついた。「力士代表として(震災には)いろいろ考えさせられた。その中で(自分には)結果、白星を求められる」。震災後は被災地で鎮魂の願いを込めて10カ所で横綱土俵入りを披露。そのとき、被災者から声を掛けられ「逆に勇気を頂きました」と振り返った。年配の被災者にとって、テレビを通しての相撲観戦は数少ない娯楽の一つ。「きょうの横綱はよかった、という気持ちになってくれれば」と思いをめぐらせた。

 復興の支援活動にも力を注いでいる。力士会などで義援金を集め一昨年夏、津波で流された岩手県山田町の土俵を高台に再建。現在は宮城県気仙沼市にも土俵を建設中で5月ごろに完成予定だ。さらに福島にも贈呈する計画もある。「勝ち負けだけじゃない、違う相撲道がある。社会貢献する宿命がある」

 大鵬が持つ優勝32回の大記録が視界に入る29歳の一年。誕生日を祝うケーキには「32」のデコレーションがあった。見据えるのは年齢と同じ29回目の優勝ではなくもっと先。「去年より筋量は増えた」と角界の第一人者は自信を持って土俵に上がり続ける。

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