沙羅W杯総合連覇!五輪後初の試合圧倒Vで雪辱果たす

[ 2014年3月2日 05:30 ]

ノルディックスキーW杯ジャンプ女子個人第14戦で今季11勝目を挙げ、2季連続の個人総合優勝を決めた高梨沙羅

ノルディックスキーW杯ジャンプ女子個人第14戦

(3月1日 ルーマニア・ルシュノブ=HS100メートル、K点90メートル)
 高梨沙羅(17=クラレ)が五輪の悪夢を払しょくする大ジャンプでW杯総合連覇を達成した。1回目に最長不倒の100・5メートルをマークすると、2回目も99メートルで合計252・0点。2位のマレン・ルンビ(19=ノルウェー)に距離にして10メートル以上の大差をつけて優勝。今季14戦で11勝を挙げ、5試合を残して総合優勝を決めた。スキーでは日本人最多となるW杯通算20勝目ともなった。伊藤有希(19=土屋ホーム)も3位に入った。

 はじけるような笑顔はなく、ガッツポーズもなかった。「しっかりリベンジしたい」と話していた五輪での悔しさを晴らすことができたのだろうか。2位以下に大差をつけた優勝、しかも年間総合連覇まで決めた。2回目を飛び終えた直後の高梨に派手な喜びはない。それでも、ソチで見ることができなかった穏やかな表情が浮かんでいた。

 ソチでは絶対的な金メダル候補とみられながら、まさかの4位に終わった。失意の帰国後は地元に帰ることもなく、山形・蔵王で黙々と練習に励み、国体のテストジャンパーまで務めた。「たくさんの方から言葉を頂いて私が頑張る理由はここにあるんだなと思った。次は総合優勝を獲るしかないと思います」と必死に気持ちを切り替えて迎えたW杯だった。

 1回目はヒルサイズを越える100・5メートルの大ジャンプ。他を寄せ付けない飛距離こそが高梨の持ち味だ。まさかの4位に終わったソチ五輪からわずか2週間あまり。悪夢を振り切るかのように2回目も最長の99メートルを飛んだ。「気持ちよく飛べた。勝てて安心した。ホッとした」。表彰台では小さくほほ笑んだ。

 ジャンプは気象条件に大きく左右される競技。一発勝負の五輪金メダルよりも、年間を通じて強さを発揮した総合優勝に重きを置かれる理由がそこにある。今大会はソチ五輪後の最初の試合。五輪で復帰したはずのライバルのヘンドリクソン(米国)は姿を見せず、銀メダルのイラシュコ(オーストリア)も五輪後の練習で膝を痛めて手術を受けた。金メダルを獲得したフォクトまでもが、大会前日の練習で転倒して負傷欠場となった。高梨だけが平然と出場して、平然と勝った。総合女王にふさわしいのはやはり高梨だった。

 五輪後に日本オリンピック委員会が発表した各選手の総括コメントで高梨は「五輪で初めてプレッシャーの恐ろしさを感じた」と心境を語っていた。2本とも追い風で悪条件も災いしたが、精神的なもろさがメダルを逃す結果につながった。

 「難しいことに遭えば遭うほどワクワクした気持ちを出しながら練習に励んできた子」。そう語るのは高梨が4歳から習っていたバレエ教室の板屋敏枝先生(46)だ。小6の時の発表会、初めて一日2役の難題を与えたが、高梨は喜々として練習に励み、大役をこなしたという。「彼女に役を与えてよかったなと思うような発表会になった」。つらい思いは当時とは比べものにならないが、きっと今回も同じだろう。悔し泣きしたソチの経験を糧に過ごす今季残り5戦、そしてこれからの4年間。その先にはもっと強くなって笑える瞬間が待っている。

 ▽高梨のソチ五輪VTR ルスキエゴルキ・センター(HS106メートル、K点95メートル)で行われ、高梨は1回目100・0メートル、2回目98・5メートルの243・0点で優勝候補筆頭とされながら、まさかの4位に終わった。2回とも不利な追い風を受け、テレマーク姿勢を決められなかった。優勝はW杯未勝利のフォクト(ドイツ)。

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