小野塚 新種目スキーHPで銅「今までで一番うれしい」

[ 2014年2月22日 05:30 ]

銅メダルを手に笑顔の小野塚

ソチ五輪フリースタイルハーフパイプ

(2月20日 ロザフータル公園)
 新種目のフリースタイルスキー・ハーフパイプ(HP)女子で小野塚彩那(25=石打丸山ク)が銅メダルを獲得した。予選を4位で通過すると、持ち味の高いエアを武器に決勝1回目は79・00、2回目に83・20と得点を伸ばした。フリースタイルスキーの日本勢表彰台は02年ソルトレークシティー大会モーグル女子の里谷多英以来。ママさんスキーヤーの三星マナミ(30=野沢温泉ク)は23位で予選落ちし現役を引退する意向を示した。

 競技転向からまだ3年足らず、シンデレラストーリーは見事に花開いた。2度目のランを滑り終えた小野塚は空に向かってほえた。得点は1回目を上回る83・20点。逆転の可能性のあったシガニー(米国)が転倒して銅メダルが確定。「今までで一番うれしい。HPに転向してよかった」。日の丸を掲げて喜ぶ姿に笑顔と涙が入り交じった。

 父はジャンプ、母はアルペン、母の実家はスキー場に隣接する旅館というスキー一家に生まれ育った。夏でもスキーを履いていたくて小6の時にはサマージャンプの大会に出場したこともある。学生時代にはアルペン競技に没頭。そこから滑りの美しさを競う基礎スキーの世界に移った。

 転機は11年4月、スキーのHPがソチ五輪の新種目に決まったことだ。それまでも遊び半分で滑っていたHPが五輪種目となったことで、小野塚は「世界に出ることの価値」を求めて転向を決意した。将来の安定を考えた親には反対され、メーカーにも「HPならお金は出さない」と突き放された。だが、一度決めたらテコでも動かないのが小野塚の性格。「収入は半分くらいになった」という苦境の中、地元の「サポーターズクラブ」の支援も受けて海外を個人で転戦した。

 念願の五輪では、自分の持ち味に忠実に滑った。スキー技術の巧みさはパイプ内での加速につながり、誰にも負けない高さを生み出す。「私は高く飛ぶことへの恐怖は感じないけど、スピンすることはめちゃめちゃ怖い」。900(2回転半)やフレア(1回宙返り)などの大技を繰り出す選手もいる中で、回転数は720(2回転)に抑えた。今季開幕前は高難度の技にもトライしたが、「できる技をちゃんとやる」方針にシフト。昨季からのルーティンを変えずに完成度で勝負した。

 「スキーというとアルペンやゲレンデスキーのイメージが強いと思うけど、こういうスキーもあるという好奇心をかき立てられればいい」。あらゆるスキーを経験した小野塚だから伝えられるHPの魅力。それがぎっしりつまった銅メダルだった。

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