佐藤コーチの言葉で吹っ切れた「何かあったら助けに行くよ」

[ 2014年2月22日 05:30 ]

キスアンドクライで手を振る浅田を見つめる佐藤コーチ

ソチ五輪フィギュアスケート女子フリー

(2月20日 アイスベルク・パレス)
 浅田を好演技に導いたのは、世界殿堂入りを果たしている名伯楽の言葉だった。さえない表情で絶不調だったフリー当日朝の練習後、佐藤コーチは選手村に戻る浅田に、かつての教え子の話を聞かせた。80年レークプラシッド五輪に出場した松村充は、試合期間中に扁桃(へんとう)が腫れるなどの体調不良で2日間寝込みながら、気合で演じ切って8位に食い込んだ。

 松村に「ぶっ倒れたら助けてやる。ぶっ倒れるまでやれ」と言った鬼コーチは34年後、浅田に「何かあったら先生が助けに行くよ」と優しく言った。不調の原因が体調ではなくメンタル面にあった浅田は「自分は何もそういうのがないのに、できないわけがない」と発奮。直前の練習で再び銀盤に立つと、もう吹っ切れていた。動きに切れが、表情には闘志が戻る。こうして、伝説の4分間が始まった。

 10~11年シーズンから浅田を指導。スケーティングの基礎から教え、全てのジャンプを見直し、クールダウンの重要性も説いてきた。厳しい言葉を投げかけ、浅田を泣かせたこともある。既に世界トップだった選手を教えることへの戸惑いもあった。「大変な時間だった」と振り返る72歳は、「フリーは全体を通して良かったんじゃないか。お疲れさま。頑張ったね」と愛弟子をねぎらった。

 選手、コーチを含めて11度目の五輪が終わり、浅田にとって最後の五輪が終わった。もし、浅田が現役を続けるなら、まだ教えたいか?そんな問いに名伯楽は、優しい笑みを浮かべて答えた。「まだ、教えたいことはいっぱいある」と。

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2014年2月22日のニュース