藤森 また転倒、夢絶たれる 再起支えた家族に感謝

[ 2014年2月16日 20:43 ]

 練習中に転倒し、涙の棄権をしてから4年。16日、3度目の五輪に挑んだスノーボードクロス女子の藤森由香は1回戦で再び転倒、メダルの夢は絶たれた。後遺症で日常生活すら危ぶまれるほどだった前回大会後の「どん底」から、姉や両親の支えで再起した。「1人じゃできなかった」。感謝の言葉を口にする藤森の目に、涙はなかった。

 胸を拳で2回たたいて気合を入れ、1回戦に臨んだ。序盤から3番手を激しく争う展開になったが中盤で転倒、結果は6着に終わり、全体では22位だった。

 19歳で出場したトリノ大会で7位に入り、一躍注目されたが、期待されたバンクーバー大会は公式練習で転倒して頭を強打。ドクターストップがかかり、直前に棄権した。

 「スノボどうこうじゃなく、普通の生活が送れるのか不安だった」。帰国後の様子を、母しのぶさん(60)が振り返る。頭痛やめまいは1カ月以上続き、家で寝込む毎日。本人から競技の話が出ることはなく、周囲も言葉をかけられなかった。

 姉の太田由美さん(29)だけが「棄権で終わっていいの」と問い続けた。ともに小学生からスノーボードを始めたライバルで、妹の実力を誰よりも知っていた。「わが事のように悔しかった。負けてもいいから納得いくまでやってほしい」と願っていた。

 もともと気持ちを口に出さないタイプの妹から明確な返事はなかったが、ハートに火は付いていた。2010年5月、藤森は留学のため再びバンクーバーへ。「また世界を回るなら必要になる」と英語を学び、筋力トレーニングを再開。4カ月後に帰国した時には、再挑戦を決めていた。

 アスリートとして、食生活に気を使う日々が始まった。「天才肌」と言われ、努力と無縁だった以前とは別人のようにトレーニングに励む娘を、しのぶさんは食事で、スノーボードショップを営む父昭さん(63)はボードの調整などで支えた。

 ソチ五輪の1カ月前、長野県長和町の実家の前にあるスキー場で、由美さんと2人で滑った藤森選手は「ソチが最後と思っている」と静かに決意を語っていた。

 レース後、転倒の瞬間を「オリンピックが終わっちゃった、とつぶやいた」と振り返った藤森。「いろんな人に支えられた。この大会に出られてよかった」と締めくくった。(共同)

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2014年2月16日のニュース