沙羅W杯17勝目 1日で葛西の10年超えた

[ 2014年1月20日 05:30 ]

インタビューを受ける高梨のまつ毛に雪が積もる

ノルディックスキーW杯ジャンプ女子個人第9戦

(1月19日 山形市蔵王=HS100メートル、K点90メートル)
 高梨沙羅(17=クラレ)が日本のジャンプ選手で最多となるW杯通算17勝目を挙げた。悪天候のため1時間半遅れで始まった1回目は、スタートゲートを2段下げて最長不倒の98メートル。2回目は強風のために途中で打ち切りとなって優勝が決まった。おなじみの黒スーツ以外で初優勝だった。男子の葛西紀明(41=土屋ホーム)と並んでいたW杯通算勝利数はこれで単独トップ。夜には都内で壮行会が行われ、ソチ五輪金メダル獲得へ決意を新たにした。

 高梨のジャンプはびくともしなかった。強風にあおられてふらつく選手が多い中、空中での飛型はぴたりと決まり、全くぶれなかった。前日は転倒した着地も無難にまとめ、他の選手より2段(約1メートル)下げたスタートゲートでも最長不倒の98メートルまで距離を伸ばした。「難しいコンディションだったけど、最後まで残って応援してくれた皆さんのおかげでいいジャンプが飛べた」。2回目が途中で打ち切りとなり吹雪の中での優勝インタビュー。感謝の弁を述べる17歳の姿に貫禄すら漂った。

 “何か”が違うと感じていたはずだ。この日は定番の黒スーツではなく白とグレーのスーツ。実は会場から離れた選手宿舎にうっかり忘れ、練習用のもので飛ばざるを得なかった。さらに悪天候で競技開始は1時間半も遅れた。普通なら嫌な予感がするもの。だが、長い待ち時間も「ジャンプ台をつくっている方、見ている方のほうがつらい。私はその人たちに楽しんでもらうために待っていた」と動じなかった。

 9月のグランプリ、アルマトイ大会ではスタート直前にビンディング(スキーとブーツをつなぐ留め具)が割れるアクシデントに見舞われたこともあった。その時も大ケガにつながる危険を顧みず飛んで勝った。一度決めたら脇目も振らない不動心が強み。スーツの違いや悪天候、進行の遅れなどへでもない。飛型同様に気持ちの面も最後までぶれなかった。

 札幌、蔵王と国内W杯4戦を総なめにし今季は9戦8勝だ。ライバルは不在で、道具のアクシデントも気にしない。ジャンプに不可避な自然の悪条件さえ苦にしない。蔵王はソチと同じ新規格に生まれ変わったジャンプ台。しかし、昨年末に同じ蔵王で行った短期合宿などで既に対応済みであることも証明された。

 先月、女子W杯の最多勝記録を塗り替え今回で日本人ジャンパーのW杯最多勝記録を更新した。葛西が日本人単独最多勝になるまでに要した時間は10年。だが、高梨は1日でレジェンドを抜き去った。30年以上の歴史を持つ男子とまだ3季目の女子で単純比較はできないが、スキー競技で日本人最多となる複合の荻原健司の19勝超えも時間の問題。立ちはだかる記録すらなくなりつつある。

 「いつも記録よりいかに楽しんで飛ぶかを考えている。次の試合も楽しんで飛べるようにベストを尽くしたい」。五輪前最後の国内戦を最高の形で締めくくった高梨は、この後6試合を戦ってソチ入りする。次に帰国するのは五輪後。金メダルを手に凱旋する日を日本中が楽しみにしている。

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2014年1月20日のニュース