白鵬「角界の親父」大鵬さん一周忌に全勝ターン

[ 2014年1月20日 05:30 ]

張って出た松鳳山の右腕を冷静に取る白鵬

大相撲初場所8日目

(1月19日 両国国技館)
 横綱・白鵬(28=宮城野部屋)が、「角界の親父」と慕っていた元横綱・大鵬の納谷幸喜さん(享年72)の一周忌に白星を飾り、28度目の優勝に向け弾みをつけた。1敗で追っていた松鳳山(29=松ケ根部屋)をとったりで退け、6場所連続31度目の全勝ターンで単独首位をキープ。1敗は鶴竜(28=井筒部屋)ただ1人となり、2敗に平幕5人が並んでいる。
【取組結果】

 「角界のオヤジ」の突然の死からちょうど1年。絶対に勝たなくてはならない日に、白鵬は超満員の国技館で気迫に満ちた相撲を見せた。突っ張って出ようとする松鳳山の右喉輪を右に回り込みながら外すと、すかさずその右腕を左で抱え込み、投げ出すようにたまり席まで吹き飛ばした。

 「大鵬さんは、白星黒星というよりか、勝つというよりか“満員のお客さんの前でいい相撲を取ってよ”という考えだと思います」

 納谷氏とは7年前に横綱に昇進した時から交流が深まり、折に触れさまざまなアドバイスをもらうようになった。昇進時には「宿命」という言葉を贈られ、「横綱になったら引退することを考えろ」と言われた。弱くなれば存在する価値がない――という横綱道を教え込まれ、以来「オヤジ」と慕うようになった。

 亡くなる2日前に会った際には、同氏が持つ史上1位の32回優勝の記録に話が及び「しっかりやれ」と背中を押された。告別式では弔辞を読んで棺を担ぎ、昨年末の納骨式にも出席。その最後の言葉を胸に歩んだこの一年、優勝回数を27に伸ばし「32」を現実として意識する段階にまできた。

 「横綱や大関への昇進に似ている。目指すものがあるというね。“昇進”したら、違う景色があるような気がします」

 前人未到の2度目の6場所連続中日全勝ターンで、自身の記録を更新する最多31度目のストレート給金を決めた。取組後の支度部屋ではその抜群の安定感がどこにあるかと問われ「企業秘密」と口にチャックをした。しかし、帰り際の国技館地下通路で「強さの秘密」についてもう一度尋ねられた際には「だから言わないって」と突き放しつつ、「日頃の稽古じゃないの」と静かに話した。

 「1年は早い。(納谷氏と)話の中で(考え方が)一致するものがたくさんあった。それが自信になっている。(この一年)成長したのか、していないのかは分からない。周りから判断されるんじゃないかな」。偉大な先人の系譜を受け継ぐと自任する横綱は、静かにそして着々と大記録に向かって歩を進めている。

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