松鳳山 男泣き初金星 横綱挑戦10度目 舞う座布団に「こらえ切れず」

[ 2013年9月17日 06:00 ]

支度部屋で目頭を押さえる松鳳山

大相撲秋場所2日目

(9月16日 両国国技館)
 涙、涙の初金星だ。平幕の松鳳山(しょうほうざん)が気迫あふれる相撲で横綱・日馬富士を押し出しで撃破した。横綱戦は10度目の対戦で初勝利。今場所初めて座布団が舞う中でうれし涙を流し、懸賞金17本(手取り51万円)を受け取ると、顔をくしゃくしゃにして花道を引き揚げた。

 ただでさえ色黒で日本人離れした顔が涙でくしゃくしゃになっていた。館内を舞う無数の座布団。それと同じ、いや、それ以上の涙が松鳳山の顔を埋め尽くした。横綱戦10回目にして初勝利。土俵上からこらえきれず、勝ち名乗りを受けると嗚咽(おえつ)を漏らしながら手刀を切った。花道で涙を拭っても、支度部屋の風呂場で汗を流しても、目は潤んだままだった。

 土俵上で泣いたのは十両昇進を決めた10年春場所11日目の青木(現徳勝龍)戦以来。「座布団はこれまでテレビで見ていたけど、自分で舞わせることができて。あれを見て、勝ったんだと実感し、こらえきれなかった。きょうは浮気せずに一直線。思いが通じた」と言葉を詰まらせながら振り返った。

 1メートル77、135キロは小柄な部類に入る。お手本にしてきたのが、同じような体格でスピードで勝負する日馬富士だった。「当たって突き放して、懐に入る。参考になる部分が多い」。立ち合いで当たり負けず、回転のいい突っ張りを繰り出す。攻撃を止めることなくじりじりと土俵際に追い込むと、最後はこん身の右はず押し。相手のお株を奪う相撲で過去7戦全敗だった日馬富士を土俵外に転落させた。

 家族の存在も力になっている。館内には身重の松谷あい夫人(27)の姿があった。来月30日に第1子を出産予定で、「嫁の前で勝てたことがうれしい。生まれてくる子に自慢できる」と松鳳山。また、おいっ子の松谷亮太くん(7)が去年から地元の福岡・築上町で相撲を始め、今年になって大会で優勝したこともモチベーションのひとつになっている。

 この日は付け人の序二段・犀皇丸(せいおうまる)が、8月23日に千葉県船橋市内の部屋の前で横転した車内で動けなくなった74歳の女性を救出したことで、日本相撲協会から表彰された。部屋で観戦した犀皇丸も「興奮しました。関取も勝ったのでうれしい」と喜びを爆発。「自分を支えてくれる人のために頑張る」が口癖の29歳は、3日目の白鵬戦でも恩返しの金星を目指す。

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