ニッポン女子22年ぶり屈辱…金ゼロ「自由」はき違えた

[ 2013年9月2日 06:00 ]

柔道の世界選手権女子78キロ超級で銅メダルに終わった田知本愛(右から2人目)

世界柔道第6日

(8月31日 ブラジル・リオデジャネイロ=マラカナジーニョ・アリーナ)
 日本女子が金メダルゼロの屈辱にまみれた。女子78キロ超級の田知本愛(24=ALSOK)は準決勝でロンドン五輪金メダルのイダリス・オルティス(キューバ)に敗れ、銅メダルにとどまった。女子の金メダルゼロは91年バルセロナ大会以来22年ぶりで、暴力指導問題の負のイメージを払しょくすることはできなかった。日本のメダル総数「7」も、男女同時開催となった87年以降では09年大会と並んで最低の数字となった。

 ある女子選手が代表決定後の練習中にケガをした。その選手は代表に連絡することもなく、所属先も代表への報告を怠った。南條充寿監督ら代表スタッフは人づてに情報をキャッチし、選手に確認したという。その時に南條監督は子供をたしなめるようにこう伝えた。

 「柔道だけでなく人間力を高めることが競技力にも影響する。ホウレンソウ(報告・連絡・相談)はしっかりしなさい」

 代表以外の強化選手でも同様の事例があった。「なんでケガしたことに気づいてくれないの?という話ではない。その時に遠征メンバーに選ばれたらどうするつもりだったのか」。南條監督は意識の低さに困り顔だった。

 暴力指導問題の影響で代表スタッフが固まったのは5月。だが、コーチ陣の準備不足だけが問題ではない。前体制の反省を踏まえ、新体制は選手の「自立」と「自律」をテーマに掲げた。78キロ級の緒方は「選手に任される部分が増えた」と歓迎。練習も代表合宿での詰め込みだけでなく所属に戻り課題をこなす時間をつくり、選手の望むような環境を与えた。だが、その“自由”は一部ではき違えられた。

 正しく自立した選手の育成。この日の田知本の戦いぶりもその必要性を感じさせた。準決勝はオルティスの掛け逃げ気味の背負いに付き合い、自分が指導をもらい敗れた。会場の大歓声は薪谷翠コーチの声も届かないほど。田知本は「背負いについていかず待っていれば向こうに指導がいったかも」と反省したが、試合中に戦術変更できる臨機応変さが必要だった。

 どこか覇気のない戦いが続き、女子は金メダルゼロに終わった。南條監督は9月の合宿で選手と面談し、方向性を決めるという。「彼女たちがどうしたいのか。私たちはこれでいいんですと言うなら話は違ってくる」。22年ぶりの屈辱にまみれた女子の浮沈は選手たちの意識にかかっている。

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2013年9月2日のニュース