稀勢 平幕相手に早くも2敗目…綱獲り絶望的

[ 2013年7月12日 06:00 ]

2敗目を喫し、力なく花道を引き揚げる稀勢の里

大相撲名古屋場所5日目

(7月11日 愛知県体育館)
 綱獲りを狙う大関・稀勢の里が平幕・千代大龍に送り出されて3勝2敗となった。場所前の稽古で顔を合わせた際に何度も繰り返した右前まわしを取ることができずに完敗。13勝以上での優勝が求められるなかで序盤で平幕に2敗し、場所後の横綱昇進は極めて厳しくなった。白鵬、琴欧洲、琴奨菊に平幕・魁聖を加えた4人が5戦全勝とした。
【5日目取組結果】

 綱獲りが絶望的になった瞬間から稀勢の里に後悔の嵐が訪れた。ぼう然とした表情で土俵から引き揚げ、花道に置かれたテレビで自らの相撲を確認すると「フッ」と一息。その後、本来であれば風呂に向かうはずだが、支度部屋に直行した。手首足首のテーピングを外しながら「んー」「ちぇ」「あー」と言葉にならない言葉を連発。我を忘れていることは明白だった。

 伏線はあった。場所前の6月29日。名古屋市天白区の仏地院(ぶっちいん)で行われた稽古で千代大龍と顔を合わせ、12番取って4敗を喫した。その際に稀勢の里がひたすら確認していたのが立ち合いで右前まわしをつかむこと。最初は効いたが、千代大龍が「つかまえられたら相撲にならない」と気付き、左かち上げの角度を上げてまわしを取られない作戦に変えた。その後、稀勢の里が一気に寄られる場面があった。

 迎えたこの日の一番。大関は予行演習通りに右前まわしを狙ったが、対策を学習済みの千代大龍は左から激しくかち上げた。稀勢の里はまわしを取れずに押され、相手の引き技にふらつき、最後はあっけなく送り出された。3日目に負けた栃煌山も出稽古で顔を合わせ、負け越した相手。絶対的な強さを稽古で示せず、場所でもそれを補う戦略を練ることはできなかったことが横綱への道を狭めてしまった。

 13勝以上のVを条件としていた北の湖理事長(元横綱)は「いい印象は受けない。厳しい状況」と突き放し、鏡山審判部長(元関脇・多賀竜)も「一縷(いちる)の望みを持ってやるしかない」と可能性を残したものの「厳しいと言えば厳しい」と現実的。序盤で2敗を喫して昇進したのは第46代横綱・朝潮だけだが、その際(59年春)は13勝2敗で準優勝だった。優勝が求められる状況の稀勢の里は「まだ終わっていない」と前を向いたが、伏し目がちなその姿はまだ大関そのものだった。

続きを表示

2013年7月12日のニュース