吉田 復帰戦残り20秒で逆転V!弱そうと“日サロ指令”も

[ 2013年6月17日 06:00 ]

全日本選抜レスリング選手権大会 女子フリースタイル55キロ級決勝で村田に勝利した吉田(右)

レスリング全日本選抜選手権最終日

(6月16日 東京・代々木第2体育館)
 女子55キロ級の吉田沙保里(30=ALSOK)が約9カ月ぶりの復帰戦を優勝で飾った。決勝では若手の村田夏南子(19=日大)にポイントでリードされながら残り20秒から逆転。国民栄誉賞受賞やレスリングの存続問題などで練習不足は明らかだったが、新ルールの下でも第一人者のプライドを示した。同63キロ級ではロンドン五輪以来の試合となった伊調馨(28=ALSOK)が完勝。9月の世界選手権(ハンガリー)の男子14階級代表も発表された。

 得意のタックルはなかなか決まらない。スタミナの必要な3分2ピリオドの新ルール。練習不足の吉田の体はもうガス欠寸前だった。だが「負けちゃ駄目。取り返さないと」とがむしゃらに村田の右足に食らいついた。残り20秒、1点ビハインドからテークダウンを奪い、土壇場で逆転の2ポイントをもぎ取った。

 昨年9月の世界選手権を終えてからは「4カ月は何もしない日々だった」。国民栄誉賞受賞などイベントラッシュ。今年に入ると今度は五輪存続問題が持ち上がった。レスリング界の顔としてPR行脚に追われ、5月末にもロシアに渡ってIOC理事会でのロビー活動に協力。滞在1週間では、1日しか体を動かすことができなかった。

 そうした不利と貢献を考慮され、今回負けても世界選手権代表入りは濃厚と見られていた。だが吉田の決意は違った。「自分のプライドが許さない。そこまでして代表になりたくない」。負ければ代表辞退の考えを栄和人監督には伝えていた。準決勝を終えた時には「おばさんやなぁ。やっぱ3分は長いわ」とため息をついたが、疲れ切った体を最後に支えたのはそのプライド。伸び盛りの19歳を破り、“霊長類最強おばさん”が文句なしで世界切符を手にした。

 ただし、まだ万全でないのは明らかだ。高田裕司強化委員長は「体が細いし、色が白くなりすぎた」と嘆き「弱そうに見えるから日焼けサロンに行ってこいと言った」と“日サロ強化指令”を下した。五輪存続が懸かる9月のIOC総会は、世界選手権直前のために回避する方向。ただし「若い選手が夢を追い続けられるように(存続へ)頑張っていきたい」という思いは変わらない。若い女子選手にとっては、レスリングの存続も大事な夢。そして、吉田が強く、高い壁であり続けることもきっとそうだ。

 ▽新ルール これまでの1ピリオド2分の3ピリオド制から1ピリオド3分の2ピリオド制に変更され、トータルポイントによる判定になった。タックルなどで相手を倒すテークダウンの得点やバックポイントは従来の倍の2点となり、7点差がつくとテクニカルフォールに。以前よりも攻撃を促すルールとなった。

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2013年6月17日のニュース