猪瀬都知事“ライバル都市批判”強気一転「表現不足」謝罪

[ 2013年5月1日 06:00 ]

 東京都の猪瀬直樹知事が米紙インタビューで20年夏季五輪招致のライバル、イスタンブール(トルコ)を批判したと疑われる発言をした問題で、知事は30日、急きょ予定を変更して登庁し、第一本庁舎の玄関付近で約20分間にわたり謝罪、釈明を繰り返した。前日は「真意が伝わっていない」と強気の姿勢だったが、一転。「不適切な発言があったことはおわびしたい」と軌道修正した。

 午前11時ごろ、報道陣や都庁職員ら約50人が待ち構える中、公用車から降り立った猪瀬知事。テレビや新聞のカメラに囲まれ、「誤解して受け取られる部分もあった。こちらの表現不足なのでおわびしないといけない」と謝罪し、殊勝な様子を見せた。

 今回の一件に関しては国際オリンピック委員会(IOC)も知事発言の事実関係に乗り出している。知事が強気の姿勢から一転し、一夜での全面謝罪となったのは問題の早期幕引きを図ったためとみられる。

 発言があったのはニューヨーク・タイムズ紙のインタビュー。同紙は27日付で「イスラム教国が共有するのはアラー(神)だけで、互いにけんかしており、階級がある」などとする知事の発言を伝えた。

 知事はインタビューでのやりとりについて「98%が(五輪招致の)東京のPRだった。最後に立ち上がる時の雑談で“イスラム初というのはそんなに意味があるのかな”という感想を述べた」と経緯を説明。不適切な発言があったと認めた。

 また、トルコの若者人口が多いことをめぐり、「若いうちに死んだらあまり意味がない」などと話したとされる点に関しても、「こちらの表現不足なのでおわびしないといけない」と釈明。

 他都市の批判などを禁じたIOCの行動規範への認識を問われると「甘かったと言えば甘かった」「ニューヨーク・タイムズのおかげでよく分かった。いい勉強になった」とした上で「他の招致国に敬意を払いながら招致活動を続けたい」と語った。ニューヨーク・タイムズ紙には抗議しない考えも明らかにした。

 知事は29日には「真意が正しく伝わっていない。他の立候補都市を批判する意図は全くなく、インタビューの文脈と異なる記事が出たことは非常に残念」とするコメントを発表。これに対し同紙は「記事には完全な自信がある」とする編集幹部の談話を明らかにし、編集者は記事について「猪瀬知事をインタビューした記者2人は流ちょうな日本語を話す。また知事は自身の通訳を用意しており、記事に引用した言葉はその通訳によるもの。通訳の言葉は録音している」と説明した。

 ≪IOCからメール≫IOCからは、招致委員会の竹田恒和理事長に事実関係の確認を求めるメールが届いたことが30日、分かった。招致委員会によると、同日、竹田理事長側は「猪瀬知事は他立候補都市へ最大限の敬意を表すべきというルールを理解しており、記事の内容は真意とは異なりますが、一部IOCルールに抵触する可能性のある不適切な表現があったことは認め、謝罪いたしました」との回答をした。竹田理事長はIOC委員も務めている。

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2013年5月1日のニュース