19歳ルーキー比嘉 3人のPO制し初V 史上6番目の若さ

[ 2013年4月8日 06:00 ]

プレーオフを制し優勝杯を手に笑顔を見せる比嘉真美子

女子ゴルフツアー ヤマハ・レディース葛城最終日

(4月7日 静岡県袋井市 葛城ゴルフ倶楽部山名コース=6549ヤード、パー72)
 ルーキーの比嘉真美子(19=フリー)が5打差逆転でツアー初優勝を果たした。瞬間最大21・3メートルの強風で上位陣が崩れる中、3バーディー、1ボギーの70。通算4アンダーで並んだ大江香織(23=フリー)、テレサ・ルー(25=台湾)とのプレーオフは2ホール目にバーディーを奪い、勝負を決めた。19歳178日での初優勝は史上6番目の若さ。3週連続で初優勝者誕生は5度目(1988年のツアー制度施行後)。亡き父と兄に勝利をささげた。

 比嘉はただ一点、1・5メートル先のカップだけを見つめていた。プレーオフ2ホール目。先に大江とテレサ・ルーがバーディーパットを外し、これを入れれば勝ち。風が吹きつける中、静かにパターを引くと、スライスラインをねじ込んだ。自然と出たウッズばりのド派手なガッツポーズ。その後に、時間差でやってきたのが緊張だった。

 「パットを打つ時は入れることしか考えてませんでした。入った後に、手と足が震えて…。本当に信じられないです」。史上6番目の若さとなる19歳178日での初V。その要因を「経験」という言葉で表現した。昨年、マッチプレーで決勝ラウンドを争う日本女子アマで史上7人目の連覇を達成。相手との勝負には「絶対に自分を曲げないこと。相手の持ち味を意識せず、自分のあるがままで戦うこと」が必要なのは分かっていた。小学校はバスケット、中学は陸上部で鍛えて飛ばし屋となった。持ち前の飛距離を生かし、2打目でグリーン手前のバンカーまで運んだ。自分のスタイルを貫き勝ち切った。

 勝利を報告したい人がいる。小学1年で兄・良樹さん(享年15)を、高校2年で父・宏さん(享年60)を亡くした。ともに病気だった。「もともと5人だった家族が3人に減って。本当につらいことがたくさんありすぎて」。そんな中でも、残された母・彰子さん(56)と姉・久実子さん(25)は自分のゴルフをサポートしてくれた。だから、昨年、プロになった際、末っ子の比嘉は「次は私が母と姉を支える」と強い決意で厳しい世界に飛び込んでいた。5打差の12位から出た最終日。強風の中、70を出した最終ラウンドとプレーオフを母と姉が見守った。空からはきっと2人も見てくれていた。「家族みんなでつかみとったもの」と万感の思いを口にした。

 ただ、涙はなかった。初優勝の先に「最大の目標」という日本女子オープン制覇を見据えるからだ。近い将来には米ツアー参戦の夢も抱く。宮里藍、美香、諸見里らを輩出した沖縄の新星。19歳の目には無限に広がる世界が映っている。

 ≪比嘉真美子プロフィル≫

 ☆生まれとサイズ 沖縄県国頭郡本部町出身。1993年(平5)10月11日生まれの19歳。小学5年で父・宏さんに連れられて練習場に行ったのがゴルフをするきっかけ。中学から諸見里らを教えた嘉数森勇さんの指導を受ける。1メートル61、58キロ。

 ☆無敵のアマ 小学6年の初ラウンドは96。1年で82をマーク。全国中学ゴルフ選手権、日本ジュニア、日本女子アマなどタイトルを次々と制覇。

 ☆天性の飛距離 本部高校1年で出たドラコン大会で315ヤードをマーク。飛ばしの秘密は、右45キロ、左43キロの握力。

 ☆素顔は19歳 休みの日はショッピングが息抜き。好きな洋服はトミーヒルフィガーで、スパゲティも大好き。 

 ≪07年以来5度目≫Tポイント・レディースの一ノ瀬優希、アクサ・レディースの堀奈津佳に続いて3週連続でツアー未勝利者が優勝。88年のツアー制度施行後、3週連続初優勝は07年以来5度目。07年は、スタジオアリス女子オープンでペジュヒ、ライフカード・レディースで上田桃子、フジサンケイ・レディースで佐伯三貴が勝った。

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