北島 4月急逝ダーレオーエンさん記録超え狙う

[ 2012年7月20日 06:00 ]

クロールでクールダウンする北島

 競泳男子平泳ぎで五輪3大会連続の2冠を狙う北島康介(29=日本コカ・コーラ)が都内で最終調整合宿を公開。最初の決勝種目となる100メートルでは、今年4月に急逝したアレクサンドル・ダーレオーエンさん(ノルウェー、享年26)が昨年7月の世界選手権(上海)でマークした58秒71を超えることを目標に掲げた。北島は20日に渡英。ロンドンで日本代表に合流する。

【北島康介】

 何秒で泳ぐかは関係ない。問題は勝負。そう繰り返し続けた北島の表情が、一変した。昨年の世界選手権でダーレオーエンさんがマークした、高速水着禁止後最速のタイムについて質問されたときだ。「競泳は記録スポーツという側面もあるんでね。自分より速く泳いだ選手がいれば、それを超えたいと思うのは当然だと思う」。鋭い視線の先には、強い気持ちが込められていた。

 昨年の世界選手権の100メートルではダーレオーエンさんに1秒32もの大差をつけられ、1分0秒03の4位に沈んだ。ハートに火をつけてくれたライバルは今でも心にある。100、200メートルとも世界ランク1位で臨むロンドン。「相手がどうのこうのじゃない」。「世界ランク1位とか考えたこともないし、関係ない」。言葉の裏には、本番では戦うことができない亡きライバルと戦って、金メダルを獲るという気持ちが秘められていた。

 北京五輪後は単身米国に渡り「(日本代表と)違うアプローチをしてきた」という自負がある。4月の日本選手権で2冠を達成。直後の代表合宿こそ参加したが、4月中旬からは再び拠点の米ロサンゼルスに戻り、1人で「自分の感覚とかを大切にしてきた」。6月1日のサンタクララ国際は200メートルでV。「(五輪本番は)やってみないと分からないけど、自分なりに順調に来てると思うし、楽しみ」と余裕を見せた。

 今月12日に帰国し、最終調整。過去3大会は代表とともに海外で調整しており「(帰国して)半分、失敗した。この暑さと湿度でしょ?自分で体力が回復するかな、と思ってもちょっと感覚が違う」と苦笑いしたが、これも技術的な不安がない証拠だ。20日に日本をたち、決戦の地ロンドン入りする。「ああいう特別な雰囲気の大会はないし、それを僕は何度も経験している。経験が生かされるかどうかは、分からないけどね」とおどけた北島の言葉には、王座は誰にも譲らないという意味も込められているに違いない。

 ▽ダーレオーエンさん急死 米アリゾナ州フラッグスタッフでの高地合宿中の4月30日、練習後にホテルの浴室で倒れているのが見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された。検査の結果、6月に死因は心臓病と発表された。北島は同氏が亡くなった直後にツイッターで「涙が止まらないよ」とつぶやき、ブログでは「よき友 よきライバルであった彼の突然な死に驚いています。この1年、彼を目標にしてきました。まだ信じられません」とコメントした。

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2012年7月20日のニュース