旭天鵬、中日で負け越し…優勝翌場所初の珍事

[ 2012年7月16日 06:00 ]

碧山(右)に「つきひざ」で敗れる旭天鵬

大相撲名古屋場所8日目

(7月15日 愛知県体育館)
 夏場所で最年長初優勝を果たした旭天鵬が碧山に敗れ、早々と負け越しが決定した。1場所15日制が定着した49年夏場所以降、優勝力士が翌場所の中日で負け越したのは、休場を除けば初の珍事。夏場所の快進撃がウソのような低迷に、37歳があえいでいる。把瑠都と大道に土がつき、全勝は23回目の優勝を狙う白鵬と、昨年名古屋場所以来3度目の優勝を目指す日馬富士の2人となった。

 まさに天国から地獄。37歳の口から出て来るのは自虐的な言葉しかなかった。取組を終え、支度部屋に戻ってきた“先場所王者”の旭天鵬は「いっちゃった。凄いね。ストレートは…」と苦笑いを浮かべた。12勝3敗で涙の初優勝を果たしたのは、わずか2カ月前。連覇の期待も懸かった名古屋の陣で味わったのは、休場力士を除けば史上初となる「優勝翌場所の中日負け越し」という珍記録。75年名古屋場所で平幕優勝した金剛(現二所ノ関親方)が翌場所に初日から7連敗を喫した記録を塗り替え「なんでも初めてがある」と必死に現実を受け止めた。

 負け方も無残だった。巨漢の碧山戦。前日までの横綱、大関7連戦とは違って一度はしっかりと四つに組んだが、寄ろうとしたところで足がついていかずに膝から土俵上に倒れ込んだ。決まり手は相手の力が加わらないまま膝をつく「つきひざ」。まさに自滅で「勝手に転んでしまったということか…」。絶句がむなしく響き渡る、踏んだり蹴ったりの一日になってしまった。

 昨年の名古屋場所も2勝13敗という成績だったが、その頃と比べて気持ちは落ち込んでいないという。その理由は「毎日凄い声援をもらってる」から。「毎日“頑張れ頑張れ”と言ってくれるお客さんに申し訳ないよ」。優勝力士としての責任が自らの心を支えている。

 9日目の相手は先場所の優勝決定戦で戦った栃煌山だが、今度は「全敗」対「1勝7敗」という真逆の状況での“大一番”となる。「あいつもオレも疲れてんねん!先場所盛り上げ過ぎたから。でも、あしたは相手の相撲を見て研究するよ」。これ以上黒星を積み重ねるようでは、周囲の風当たりも強くなる。優勝力士のメンツにかけても、残り7日は落とせない。

 ◇金剛の7連敗 西前頭筆頭で迎えた75年名古屋場所を13勝2敗で初優勝した金剛は翌秋場所で東関脇に昇進した。しかし、初日に関脇・三重ノ海に寄り切られると、北の湖、輪島の両横綱にも歯が立たず、初日から7連敗。8日目に大関・魁傑を寄り切ってようやく初勝利を飾り、後半は巻き返して6勝9敗で終えた。

続きを表示

2012年7月16日のニュース