白鵬 天敵・稀勢の里を秒殺!史上初3差逆転V見えた

[ 2012年5月19日 06:00 ]

天敵・稀勢の里を速攻からの寄り倒しで破った白鵬。トップと1差に迫り優勝戦線再浮上

大相撲夏場所13日目

(5月18日 東京・両国国技館)
 4敗の横綱・白鵬が逆転優勝を視界に捉えた。2敗で単独トップに立っていた大関・稀勢の里を速攻相撲で寄り倒し、1差に迫った。9日目で4敗となった横綱だが、終盤になって安定感を取り戻し、史上初の3差逆転優勝が現実味を帯びてきた。3敗の平幕・栃煌山、旭天鵬はともに勝ち、稀勢の里とともに優勝争いのトップに並んだ。4敗は白鵬、平幕の隠岐の海、碧山の3人となった。
【取組結果】

 立ち合いの直前、白鵬の白い肌は気合でピンク色に染まっていた。館内に乾いた音が響くほどの張り手を浴びせると、すぐに右を差した。十分の左上手を引けなくても、体を密着させて一気に出た。形にこだわらず、勝利への執念だけで天敵・稀勢の里を寄り倒した。

 「今場所はなかなかまわしに手がかからない場面もあり、速い相撲を心掛けている。それがいいのかな」。稀勢の里には一昨年九州場所で連勝を63で止められ、最近4場所では2勝2敗と苦戦していたが、ここ一番で横綱の威厳を示した。勝負に要したのは今場所最短の2秒5だった。

 20場所ぶりの黒星発進となった初日の安美錦戦で、左手人さし指を剥離骨折。詰めの甘さもあり7日目から平幕の豊響、関脇の豪栄道、豊ノ島に3連敗した。5年間の横綱生活で初めて休場をささやかれるピンチ。だが、最後まで取り続ける覚悟は固まっていた。「絶対に負けられない気持ちがあった」。大関戦が始まった10日目から安定感を取り戻して4連勝。優勝戦線に再浮上した。土俵下で見届けた朝日山審判長(元大関・大受)は「4敗してから吹っ切れたようだ。相撲が速い。逆転優勝もありそう」と横綱の底力を称えた。

 12日目終了時の首位との2差を逆転した例は過去に3度あるが、最大3差を逆転すれば史上初めて。春場所は鶴竜との1差を千秋楽に逆転して22度目の優勝を飾ったが、それをしのぐミラクルが見えてきた。「こうなったら優勝を目指して残り2日間、頑張るだけ。狙っていこうか。悪い時もあれば、いい時もある」。優勝するためには3敗力士が残り2日間で1敗以上しなければならないが、4敗までの6人で優勝経験があるのは白鵬だけ。チャンスは十分だ。

 打ち出し後は元大関でタレントのKONISHIKIの案内で福島県相馬市から観戦に訪れた飯豊小の6年生36人と記念撮影。「元気をもらったよ」と笑顔をふりまいた。手負いの一人横綱は相撲史に残るドラマを演出し、千秋楽にも再び笑顔を見せる。

 【過去の11勝4敗での優勝】

 ☆72年初場所=前頭5枚目・栃東 初日から横綱と大関の対戦が組まれた異例の場所。序盤から波乱含みで千秋楽を迎えて4敗の大関・琴桜、平幕の福の花、栃東を5敗で5人が追う大混戦に。福の花と琴桜が敗れ、結びで栃東が上手出し投げで清国を倒し、初優勝。もし栃東が負けていれば8人による優勝決定戦になっていた。

 ☆96年九州場所=大関・武蔵丸 4連覇中だった横綱・貴乃花が全休。千秋楽の本割で3敗の武蔵丸、大関・若乃花がともに敗れ横綱・曙、大関・貴ノ浪、関脇・魁皇を加えた史上初の5人による優勝決定戦に突入。初戦で魁皇と若乃花が敗退。3人による巴戦の末に、武蔵丸が曙と貴ノ浪を連破し、2回目の優勝に輝いた。

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2012年5月19日のニュース