稀勢1敗死守!8年半ぶり日本人大関が単独トップに

[ 2012年5月16日 06:00 ]

琴欧州を寄り倒しで破る稀勢の里

大相撲夏場所10日目

(5月15日 両国国技館)
 稀勢の里が苦手の琴欧洲を寄り倒しで下し1敗を死守、自身初めて単独トップに立った。10日目終了時点で日本人大関が単独首位に立つのは、03年九州場所で優勝した栃東以来8年半ぶり。稀勢の里は他の横綱、大関に2差以上をつけ、06年初場所の栃東以来となる日本人優勝に前進した。2敗は栃煌山、玉鷲、宝富士の平幕3人。休場も危ぶまれた横綱・白鵬は大関・鶴竜を速攻で下し、連敗を3で止めた。

 単独トップに立ってから10分以上が経過しても、稀勢の里の表情は「戦闘態勢」だった。勝ち残りの土俵下で白鵬の勝利を見届けて引き揚げてきた支度部屋。大勢の報道陣に囲まれた大関の顔は紅潮したままだった。極限の緊張状態時に見せる、目を何度もぱちぱちと開くしぐさを連発。何度も息を吐き「立ち合いだけに集中した。あとは自分を信じて前へ出ようという気持ちだった」と言葉に力をこめた。

 大きな1勝だった。出番前に1敗で並走していた栃煌山が2敗に後退。勝てば単独首位となる琴欧洲戦は、これまで12勝23敗と劣勢の鬼門だった。春場所ではもろ差しを許し、一方的に寄り切られた。その悪夢が脳裏をよぎり、気負いから立ち合いで押しこまれた。だが、懸命に左へ回り込んで食い下がり先に右上手をつかんだ。ここが勝負どころと意を決し、かいな(腕)を返しながら一気に寄り倒した。

 日本人力士が10日目以降に単独首位に立つのは07年秋場所の豪栄道(11日目)以来。大関に限れば、03年九州場所で初日から10連勝した栃東以来となった。1差の2敗で追うのは平幕の3人。終盤戦で、しのぎを削る横綱・大関陣には2差以上をつけている。初優勝の可能性が広がる中、茨城県龍ケ崎市の母校・長山中が動いた。11日目には、修学旅行の代休を利用し鈴木裕一校長ら教師6人が横断幕を用意して応援に駆けつけるという。

 外国人力士の台頭が著しい中、06年初場所の栃東以来となる日本人優勝へ道は大きく開かれた。「一日、一日、集中して、やることをやれば硬くなることはない」。言葉は日増しに少なくなっても、気合十分の顔色はどんどん真っ赤に染まっていくだろう。

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2012年5月16日のニュース