やり投げ界に超新星!ディーン元気“五輪投確”日本歴代2位

[ 2012年4月30日 06:00 ]

<男子やり投げ>五輪参加標準記録Aを突破する84メートル28で2位のディーン元気

陸上織田記念国際最終日

(4月29日 広島広域公園陸上競技場)
 スーパースローで一気にメダル圏内に突入だ。男子やり投げでディーン元気(20=早大)が、84メートル28の日本歴代2位の好記録をマークして2位。自己ベストを一気に4メートル68も更新し、ロンドン五輪参加標準記録A(82メートル)も突破した。昨年の世界選手権(大邱)銅メダルの記録とはわずか2センチ差。ディーンの父・ジョンさん(57)は英国人。新星は、父の母国で開催される夢舞台で表彰台を狙う。

 見せ場はいきなりやってきた。ディーンの1投目。スムーズな助走から、体全体を使ってやりを投げた。右腕を振り抜くと、勢い余って地面へダイブ。しかし、すぐに立ち上がって右拳を突き上げ、喜びを爆発させた。日本歴代2位(歴代1位は溝口和洋の87メートル60)となる84メートル28で五輪参加標準記録Aを突破。精悍(せいかん)な顔立ちの20歳は「火事場のばか力が出た。投げた瞬間に“行った”と思った。完璧ッス」と胸を張った。

 父・ジョンさんは英国・ニューカッスル出身。日本人の母を持つハーフ。ラグビー経験者の父からパワーを受け継ぎ、中学から投てきを始めた。世界選手権銅メダリストの村上が保持していたジュニア日本記録を10年に更新すると、この日は村上の自己ベスト(83メートル53)も超えた。86メートル31をマークしたファーカーには敗れたものの、ディーンの84メートル28は昨年の世界選手権銅メダルの記録に2センチ差。五輪の表彰台も狙える位置に一気に躍り出た。

 オフのトレーニングの成果で、自己記録を4メートル68も更新した。2月に投てきの強豪国・フィンランドのナショナルチームに合流して、同国とスペインで約3週間の合宿を敢行した。本来ならコーチが同行するが、英語が堪能なディーンは単身で海を渡った。世界トップクラスとの共同生活で、海外勢へのコンプレックスは消えた。技術面でも影響を受け、投げるときに左肩が開く癖を修正すると、練習から80メートル台が出るようになった。

 「俺は弱くないって気づかされた。合宿で爆発的に伸びた」と振り返る。ベンチプレスで自己ベストを10キロ塗り替えるなど筋力アップにも成功。体を思い通りに操るため、体操の平行棒や鉄棒のトレーニングも導入し、快記録につなげた。

 参加標準記録Aを突破したことで、6月の日本選手権で優勝すれば五輪代表に内定する。優勝を逃しても、上位に入れば夢切符は確実だ。父の母国で開催されるロンドン五輪には、特別な思いを抱いている。「何よりの親孝行になると思う」と笑みを浮かべ、「一発屋って言われないようにしないと。ロンドンで、もう一回ベストを出したい」と気合を入れた。やり投げで五輪のメダルを獲得すれば日本勢初。偉業に向かって、ディーンがビッグスローを連発する。

 【男子】▽やり投げ(1)ファーカー(ニュージーランド)86メートル31(2)ディーン元気(早大)84メートル28(3)ルーカスネン(フィンランド)80メートル83(4)荒井謙(七十七銀行)79メートル90(5)村上幸史(スズキ浜松AC)79メートル56

 ≪世界記録は98メートル48≫やり投げの世界記録はゼレズニー(チェコ)が96年に出した98メートル48。日本記録は87年に溝口和洋がマークした87メートル60。昨年の世界選手権ではデツォルド(ドイツ)が86メートル27で優勝。08年北京五輪はトルキルドセン(ノルウェー)が五輪新記録の90メートル57で金メダルを獲得した。

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