尾崎３度目挑戦実った！日本人トップ２位で五輪有力

＜名古屋ウィメンズマラソン＞日本人トップの２位でゴールをした尾崎好美

名古屋ウィメンズマラソン

（3月11日 ナゴヤドーム発着）
　女の執念で夢切符をたぐり寄せた。前身の名古屋国際から約１万３０００人参加の市民マラソンに生まれ変わった大会がロンドン五輪代表の最終選考会を兼ねて行われ、尾崎好美（３０＝第一生命）が２時間２４分１４秒で日本人トップの２位に入った。選考会３度目のチャレンジで結果を出し、五輪代表の有力候補になった。アテネ五輪金メダリストの野口みずき（３３＝シスメックス）は２時間２５分３３秒で６位、アルビナ・マヨロワ（３４＝ロシア）が２時間２３分５２秒で優勝した。男女各３人の代表は１２日に発表される。

　夢舞台への熱い思いが体を突き動かした。３７キロすぎから続いた中里とのデッドヒート。残り７００メートル、一気にギアチェンジした尾崎が日本勢トップでナゴヤドームに帰ってきた。サングラスを外し両手を広げて歓喜のフィニッシュ。「日本人１位になって五輪に出たいって気持ちを表したので、そこを評価してもらえたら。五輪への道は開けたと思う」。レースだけでなくコメントでも日本陸連に猛アピールした。

　アテネ五輪金メダリストの野口、前日本記録保持者・渋井、世界選手権５位の赤羽ら豪華メンバーがそろった一戦。「こういうメンバーで勝てたんだから、文句なしで勝ったぞって感じです」。序盤は集団でライバルを観察した。「野口さんや赤羽さんは呼吸がきつそうだった」。中里と並走した終盤は、仕掛けるタイミングをうかがっていた。「“いける”って思うところまでタメていました」。昨年１１月の横浜国際では残り６００メートルで木崎に逆転されたが、この日は一気の加速で苦い記憶も置き去りにした。

　代表内定を狙った昨夏の世界選手権で１８位と惨敗。横浜国際でも木崎に敗れ「また選考会を走ることは考えていない」と一度は五輪の夢を諦めた。だが「選考会をテレビで見てる自分は想像できない」と３度目の選考会チャレンジを決断。第一生命に入社以来、９２年バルセロナ五輪４位の山下佐知子監督（４７）に五輪の素晴らしさを説かれ、最高峰の舞台に魅せられた。「五輪がどういうものか感じたい」。横浜国際前は貧血を訴え山下監督に激怒されたが、今大会に向けて食生活を見直し。栄養を補うためサプリメントも摂取し、過去最高のコンディションだった。

　昨年１２月、宮城が舞台の全日本実業団駅伝に出場し、１区で区間賞を獲得。東日本大震災からの復興を目指す被災地での好走が、その後の順調なマラソン練習につながった。「マラソンが開催されて、出場できるのは当たり前のことじゃなくて、感謝したい」。昨年の名古屋は震災の影響で中止だった。歓声を浴びながら走る喜びを胸に、諦めない姿を示した。

　運命の代表発表は、１２日。木崎、大阪国際を圧勝した重友に続いて、尾崎の代表入りは有力だ。「出場することができたら、メダルを目指して練習をしっかりやりたい。さらに前向きにやっていきたい」。世界大会の経験がない木崎、重友に対して尾崎は０９年世界選手権で銀メダルを獲得。ラストチャンスをモノにした３０歳が、マラソン・ニッポンの柱になる。

　◆尾崎　好美（おざき・よしみ）１９８１年（昭５６）７月１日、神奈川県足柄上郡山北町生まれの３０歳。相洋高卒。００年第一生命入社。初マラソンの０８年名古屋国際で２時間２６分１９秒の２位。自己ベストは０８年東京国際の２時間２３分３０秒。世界選手権は０９年ベルリン銀メダル、１１年大邱（テグ）１８位。１メートル５４、４１キロ。