把瑠都 全勝キープも“注文相撲”に「帰れコール」

[ 2012年1月20日 06:00 ]

稀勢の里(左)をはたき込みで下す把瑠都

大相撲初場所12日目

(1月19日 両国国技館)
 大関・把瑠都は立ち合いで左に動いて大関・稀勢の里をはたき込みで破り、全勝をキープした。1差で追っていた横綱・白鵬が大関・日馬富士に敗れて2敗に後退したため、13日目に把瑠都が勝って白鵬が敗れると、初優勝が決まる。優勝に大きく前進したものの、注文相撲での勝利とあって、館内には“帰れコール”が湧き起こった。
【取組結果】

 熱戦を期待したファンの失望が噴出した。「カ・エ・レ!」「カ・エ・レ!」。館内から湧き起こった手拍子付きの“帰れコール”。把瑠都は気まずくなったのか、琴欧洲に力水をつけると花道を小走りで引き揚げた。それでも、館内から見えないところまで来ると思わず白い歯を見せてニヤリ。支度部屋では「ヨッシャー!」と奇声をあげて風呂に飛び込んだ。

 初優勝を渇望するあまりの変化だった。立ち合いで先に手をついたが呼吸が合わない。いったん手を引き上げ、稀勢の里が手を下ろすのを待ってから立つと、左へ大きく踏み出した。同時に両手で新大関の後頭部を押さえつけて勝負を決めた。

 ブーイングに心が痛んだのか、風呂から上がると神妙な面持ちに変わっていた。「最初は組むか、突き放していくつもりだった。何と言えばいいのか。体が勝手に動いた。見に来てくれたファンの皆さんに申し訳ない」と“謝罪”した。

 単独トップに立つ大関の注文相撲に、協会幹部からも不満の声が出た。中村審判長(元関脇・富士桜)は「お客さんも怒っちゃうよ。しっかり相撲を取ってくれないと」と苦言。放駒理事長(元大関・魁傑)は「まともにぶつかり合ってほしかった。注目の相撲があれではお客さんも興ざめ」とため息を漏らした。観戦した横綱審議委員会の鶴田卓彦委員長は「綱獲りに響く。正々堂々いかないと。日本の心を忘れている」と戒めた。

 12日目を終えて白鵬と2差。千秋楽に横綱戦が予定されるが、初優勝には大きく前進した。それだけに、非難を浴びても迷いはない。「一日一番、集中して取るだけ」。すっきりと悲願を達成するためにも、残り3日間は1メートル99の巨体を真っ向からぶつけていくしかない。

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2012年1月20日のニュース