劇的幕切れ…帝京大 史上2校目の3連覇達成!

[ 2012年1月9日 06:00 ]

優勝が決まり、森田主将(手前10)に駆け寄る滑川(中央)ら帝京大フィフティーン

ラグビー全国大学選手権決勝 帝京大15-12天理大

(1月8日 国立)
 24季ぶりの東西決戦は帝京大が天理大を15―12で下し、82~84年度の同大以来27季ぶり2校目の3連覇を達成。12―12の後半39分にSO森田佳寿主将(4年)がPGを決める劇的な勝利となった。左足首などを痛めて満身創痍(そうい)だった森田主将は抜群のリーダーシップを発揮し、早大、明大などが成し遂げられなかった偉業を手にした。

 12―12で迎えた残り30秒。部員136人の思いを乗せて帝京大のキッカー森田主将がこん身のPKを蹴った。ボールは右ポスト先端に当たりながらも際どく入って勝ち越し。残された時間は13秒。天理大は再逆転を狙い最後の猛攻を仕掛けるが、試合終了を告げるブザーが鳴って森田がボールを外へ蹴り出す。直後に歓喜の抱擁が始まった。

 劇的な幕切れで史上2校目の3連覇達成。森田は「この1年間3連覇を目標にやってきた。部員の気持ちがボールに乗った」と声を弾ませた。昨年12月24日には元日本代表SOの福岡幸治コーチ(36)を急きょ招へい。体の軸のズレを修正した成果を土壇場で披露した。

 体は満身創痍だった。昨年11月20日の明大戦で左肩を負傷。それから左腕打撲、左ふくらはぎ肉離れ、左足首捻挫を発症して痛み止めをのんでの出場だった。前半16分に選手権初のトライを奪われた。その後2トライで逆転も再び追いつかれた。肝心の森田も負傷で走れず、チームはいつもの縦ではなく横の攻撃でリズムを失った。苦しい戦いの中でも、常勝軍団は勝機を待っていた。終了間際にバックス攻撃が主体の天理大が帝京大陣内でボールを保持すると珍しくFW攻撃を仕掛けた。それを見逃さず、密集で激しいプレッシャーをかけ反則を奪い、勝負を決めるPKを獲得した。

 今季は「克己(こっき)」という言葉を胸に刻んで挑んだ。「リーダーが必要なのはピンチの時と油断の時」。対抗戦で全勝優勝を飾ったが、夏合宿から朝にミーティングを毎日実施し、気を引き締めさせた。アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏の伝記を読んでリーダー論を研究、試合前にはMr.Childrenの「エソラ」と「GIFT」を聴き、集中力を高めた。

 重圧との闘いに勝ち、帝京大の黄金時代の礎を築いた。来季は後輩たちが史上初の4連覇の偉業に挑むが「僕らのチームを追い抜いて4連覇を達成してほしい」とエールを送る。会場を去る時に左足を引きずっていた主将の表情には、痛みを忘れさせるほどの充実感がみなぎっていた。

 ◆森田 佳寿(もりた・よしかず)1989年(平元)5月14日、奈良県郡山市生まれ。治道小4年時に郡山少年少女RSでラグビーを始める。郡山東中―御所工(現御所実)―帝京大医療技術学部。09年U―20日本代表。来季は東芝に入社する。1メートル72、83キロ。

 ◆帝京大の主な進路 吉田(トヨタ自動車)、前田龍(近鉄)、西村(NTTドコモ)、白、伊藤(NTTコミュニケーションズ)、ボンド(サントリー)、大出、小山田(豊田自動織機)、滑川(トヨタ自動車)、中村(ホンダ)、森田(東芝)、南橋(神戸製鋼)、櫂(サニックス)

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