室伏 石巻の中学生からの手紙に発奮!

[ 2012年1月1日 06:00 ]

石巻市門脇中の平君からの手紙を手にする室伏

 東日本大震災の被災者への思いを背負って、ロンドン五輪に立つアスリートがいる。陸上男子ハンマー投げの世界王者・室伏広治(37=ミズノ)は、交流のある宮城県石巻市立門脇中の平和樹君(3年)から贈られた直筆メッセージに気合十分。ロンドンから勇気を届ける。

 困難に立ち向かう少年からの熱い激励に、燃えないわけがない。室伏の元に届いた被災地からのメッセージ。「ロンドン五輪でも室伏さんならプレッシャーに負けず最大限の力を発揮してくれるでしょう。心から応援しています」――。差出人は一人の中学生。昨年2度にわたって訪問した石巻市立門脇中3年の平君からのものだ。真剣なまなざしで文字を追った鉄人は、夢舞台に向けて気合を入れた。

 「手紙をもらって、彼の前進しようとする力強さを感じることができた。ロンドンで全力で取り組む姿を見てもらいたい」

 東日本大震災後の昨年6月13日、室伏は復興支援のために初めて門脇中を訪れた。「一日体育教師」を務め、生徒とのリレーなどで交流。そして、昨夏の大邱(テグ)世界選手権(韓国)での金メダル獲得を生徒に約束した。日頃、順位の目標を公言しない室伏にとっては、異例の約束だった。「大震災を乗り越えることは長きにわたること。それは、私の年齢で金メダルを獲ることに相当する以上のものだと思った」。有言実行の戴冠。36歳325日での優勝は、世界選手権史上最年長だった。

世界選手権が終わるとすぐに、平君から「おめでとうございます」という手紙が届き、室伏は「これからも一緒に頑張っていこう」と返事を書いた。昨年10月31日には金メダル獲得の報告のため、再び門脇中を訪問した。「みんな世界選手権を見てくれたこともあって、少し目の輝きを取り戻してくれたかなという感じがする」。同中の生徒から贈られたメッセージ入りの日の丸は、今でも室伏の宝物だ。

 王者はこれからも被災者との交流を続けていく。「物心ともにサポートしながら、節目節目でできることをやっていきたい」。男子ハンマー投げ決勝は、8月5日(日本時間同6日)。室伏から放たれる鉄球は、重力にもライバルにも屈しない。ロンドンで描く金色の放物線が、被災地への最高のエールだ。

続きを表示

2012年1月1日のニュース