相撲協会、波紋呼ぶ?決定…八百長関与力士にも給与

[ 2011年2月10日 06:00 ]

眼鏡が曇っていた?記者会見で外した眼鏡をかける放駒理事長

 日本相撲協会は9日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、春場所中止に伴う諸問題を協議。十両以上の関取や親方の給与、幕下以下の場所手当を通常通り支給すると決めた。八百長関与を認めた十両・千代白鵬(27=九重部屋)、竹縄親方(35=元幕内・春日錦)、三段目・恵那司(31=入間川部屋)と、特別調査委員会が関与を認定した十両・清瀬海(26=北の湖部屋)も含まれる。全関取から聞き取り調査をしている特別調査委は9日までに横綱・白鵬(25=宮城野部屋)を含む33人から聴取。調査は粛々と進められているが、協会の対応には疑問の声が上がりそうだ。

 理事会、師匠会後に会見した放駒理事長(元大関・魁傑)は「みんなに迷惑をかけた人間に給与を支給していいのかと、葛藤はありませんでしたか?」という質問に「確かにありました」と答えた。その上で「協会としては特別調査委員会の報告を受け、処分が決まるまではこのままでいく」との見解を繰り返した。処分決定後に返還を求める可能性については「今はそこまで考えていない」と話すにとどめた。関与を認めた力士らに対する支給が苦渋の措置であることを認めた。

 午後1時から行われた理事会で、春場所の中止に伴う諸問題を話し合った。番付については、初場所の成績を参考にして1月26日の番付編成会議で作成されたものを、発表日となるはずだった28日から適用。各部屋に配布する。既に再十両力士として発表された幕下・玉飛鳥(片男波部屋)、益荒海(阿武松部屋)、磋牙司(入間川部屋)は同日から関取待遇となる。次回本場所が開かれる際は、関与力士が処分を受ける可能性が高いため、番付も変わる。そのため今回のものは、いわば“幻の番付”となる。

 この番付に準じて関取や親方への月給も支給される。相撲協会は春場所の中止で入場料収入など10数億円の損失を被るとみられるが、場所ごとに各部屋に支給する力士1人当たり11万5000円の部屋維持費や幕下以下の力士約600人への場所手当などは支払う。能力給にあたる「褒賞金」は支給しない。

 普段は無給の幕下以下の力士に手当を支給するのは英断だが、その一方で問題もある。八百長関与を認めている十両・千代白鵬や関与が認定された清瀬海には103万6000円、竹縄親方には80万8000円の月給が支給される。三段目・恵那司も場所手当として10万円を手にする。角界の根幹を揺るがす問題を引き起こした張本人らを他の協会員と同じ待遇で扱うことになるだけに、ファンの理解を得られないばかりか、協会内にも反発の声が湧き上がることは必至。千代白鵬にいたっては一度、引退届を提出している。引退を表明した力士へ給与を払うのは初のケースだが、放駒理事長は「(引退届は)受理していませんから」と問題視しなかった。

 協会としては、八百長の調査を進めるため関与力士らを処分できない事情がある。協会員である以上「クロ」と分かっていても給与を支払わないわけにはいかない。それでも、臨時理事会でほとんど反対意見が出なかったというから身内に甘いと言わざるを得ない。苦渋の措置だが、波紋を呼びそうだ。

 ≪自主的返還に期待も≫八百長関与力士らに給与などが支給されることに関して、社会評論家の小沢遼子さんは「力士をクビにするか、給料を支払うか。協会側には2つの選択肢しかない。辞めさせずに引き留めるのなら給料を出すのは当然。(関与)力士の家族にだって生活があるから減額は難しい」と肯定的な見解を示し「そもそも八百長に関する罰則規定がないのだから仕方がないでしょう」と付け加えた。一方、日本相撲協会の友綱理事(元関脇・魁輝)は「力士の養成費を返すか、受け取るかは師匠が判断するだろう」と自主的な返還に期待感を示した。

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