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こだわり旬の旅

【栃木】芭蕉が詠んだ光景今も…「おくの細道」の名刹・雲巌寺を訪ねて

[ 2018年4月2日 19:05 ]

小百合のCMで使われた雲巌寺。朱色の反り橋が美しいコントラストを描いている
Photo By スポニチ

 女優吉永小百合が出演するJR東日本「大人の休日倶楽部」のCMの撮影地、栃木県大田原市の雲巌寺が人気を呼んでいる。江戸時代の俳諧師・松尾芭蕉が「おくの細道」で立ち寄った寺院で、芭蕉は同市・黒羽に14日間滞在。ゆかりの地も各所に残っている。折しも県内ではデスティネーションキャンペーン(DC)を展開中。同寺を中心に春の栃木路を回った。

 武茂(むも)川にかかる朱塗りの反り橋「爪?橋(かてっきょう)」、見上げるほどの石段、二階造りの山門……そこにはCMで見る光景が確かにあった。東北新幹線那須塩原駅からバスで約1時間の雲巌寺。1283年(弘安6)に仏国国師によって創建された臨済宗妙心寺派に属する禅寺で、日本の四大道場の一つとされる名刹だ。

 山門をくぐると正面に仏殿、左手に「啄木鳥(きつつき)も庵(いお)は破らず夏木立」との松尾芭蕉の句碑。芭蕉が江戸深川時代に禅の教えを受け、師であり尊敬していた仏頂和尚がここで修行を積んでいたことから、その山居跡を訪ね和尚をしのび詠んだもの。2人の関係を象徴するかのように、同じ碑に「縦横の五尺にたらぬ草の庵、むすぶもくやし雨なかりせば」との仏頂和尚の句が刻まれている。

 弟子の曽良を伴い「おくの細道」へと旅立った芭蕉が雲巌寺を訪れたのは1698年(元禄2)旧暦4月5日(新暦5月23日)。黒羽に到着した2日後のことで、1日で約12キロの距離を往復したことを考えれば、芭蕉がいかに同寺訪問を待望していたかがうかがえる。

 芭蕉はその後黒羽に戻り同16日まで、「おくの細道」では最長となる14日間滞在。その理由として「雨が多かった」「大好きなこんにゃくでもてなされるなど住民との交流があった」など諸説あるが、この間、江戸で芭蕉の門人となっていた黒羽藩城代家老・浄法寺高勝(桃雪)邸と、その弟・鹿子畑豊明(翠桃)邸に逗留。曽良とともに多くの句を詠んだという。

 JR東北本線西那須野駅からバスで約40分、黒羽藩主大関家の菩提寺・大雄寺(だいおうじ)から「黒羽芭蕉の館」(観覧料300円)へと続く約800メートルの遊歩道「芭蕉の道」沿いには、そうした10句の句碑のうち4つの句碑が点在。途中にある旧浄法寺邸は浄法寺邸を再現したものだが、武家屋敷の趣を残しており、そばの碑に刻まれた「山も庭も動き入るや夏座敷」の句は黒羽の山河と浄法寺邸の庭園の美しさを詠んだものという。

 黒羽芭蕉の館では芭蕉と大関家に関わる資料を常時展示。建物の前には芭蕉が馬にまたがり曽良を従えるブロンズ像が設置されており、「おくの細道」を旅する2人の姿がしのばれた。

 ▽行かれる方へ 車は東北道西那須野塩原ICから約50分。DCは6月までで、さまざまなイベント、特典あり。問い合わせはDC実行委員会=(電)028(623)3305、大田原市観光協会=(電)0287(23)8709。

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