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性格正反対も波風立たず 仲良し2人 勝浦一の船宿目指す

[ 2018年4月18日 07:08 ]

「肩を組んで」と注文したらこの笑顔。仲良し父子だ
Photo By スポニチ

 【シリーズ親子船】妻は夫をいたわりつ、夫は妻を慕いつつ…は浪曲「壺坂霊験記」の一節。その伝えでいけば房総の、この父子は「父は子をいたわりつ、子は父をしたいつつ」。勝浦松部港・信照丸は今どきの世の中は珍しい仲良し親子で海に出る。(笠原 然朗)

 勉は漁師だった父・信義の後を継いで16歳のとき海に出た。

 勉「学校に行きたかったけど、″そういうもんじゃないでしょ”という雰囲気。学校へ行きたければ全て自分でやれ、と」

 達哉「高校を中退して船に乗った。別にやりたいこともなかったし…」

 勉「後を継がせる気はなかったよ。苦労が多いしね」

 達哉「子供の頃から乗り物酔いがひどかった。電車に乗っても酔ったぐらい」

 勉「最初は船に乗っても寝ていたよ。俺も最初は酔ったしね。そのうち慣れると思った」

 達哉「1年ぐらい船から上がっても気持ち悪かった」

 勉「釣りに来るお客さんはすげぇなあと思うよ。海が悪くても平気だからね。お客さんは怪物だな」

 ナギの海のように穏やかで優しい性格の達哉。愛息が船に乗ると言いだして父は…

 勉「後継者ができたことはうれしい。でも大変だとは思うよ」

 勉は「パソコンに詳しい船長」からその使い方を一から学び、遊漁船業界ではいち早く宿のホームページを立ち上げた“IT船長”でもある。

 達哉「(親父の)ホームページは作り直した。ITに強い?う〜ん、人並みですよ。ネットを見て来る人も多いからホームページは充実させないと」

 達哉は4月から東日本釣宿連合会の青年部長に就任。「青年部発」のフェイスブック作りにも携わっている。そんな今どきの青年のオヤジ像は…

 達哉「釣りの腕、操船、技術はまねできない。お客さんに釣らせているし。俺は釣れないと移動しない。親父は常にポイントを探して走り回っている」

 勉「午後船は達哉。すげー釣ってくるときがあるよ。俺、(船長を)やんねぇ方がいいんじゃないか、と思うぐらい」

 達哉「俺は安定感がないんだ。何も釣れないときがある」

 勉「いまはマハタを主に狙っているけど、根魚は難しいよ。奥深い。その分、楽しい」

 あえて船長としての父に注文をつけるとすると何なのか?達哉に聞いてみると瞬時に答えが返ってきた。

 達哉「接客」

 勉「俺、接客しないし。お客さんに怒鳴ったりはしないよ。でもバラされるとムッとくるね。話しかけられるのもうっとうしい。操船で精いっぱい。静かにしていてほしいよ」

 達哉「お客さんと接するのは好き。性格的な問題かな。苦にはならないな」

 勉「働き者で面倒見がいいから達哉目当てにお客さんが来る。糸のオマツリも時間をかけて丁寧にほどいてあげている。お客さんには感謝されているよ。そんなの切っちゃえばいいのに、と思うよ」

 勉は達哉について「口つけることは何もない」と言う。仕事のパートナーとして評価も高い。だがあえて注文を出すとすれば…

 勉「早く身を固めて(結婚して)ほしい。誰かいないかな?」

 達哉に将来の夢を聞いた。

 達哉「勝浦のNo・1船宿になる。現実は甘くないかな…」

 ▼釣況 東日本釣宿連合会所属、勝浦松部港・信照丸=(電)0470(73)3483。

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