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ボート94艘に100人宴会場 一大観光スポットをパワーで切り盛り

[ 2018年3月14日 08:46 ]

(左から)一さん、修子さん、恭平さん
Photo By スポニチ

 【釣り宿おかみ賛】ヘラブナやワカサギなどの魚が狙える神奈川県相模湖・天狗岩釣案内所の女将が山口修子(しゅうこ)さん(57)。ボート94艘(そう)を所有し、弁当作りや民宿、宴会場の切り盛りもしている。店主で夫の一(はじめ)さん(57)と店を大きくしてきた過程には、パワーあふれる女将さんの姿があった。 (入江 千恵子)

 新宿駅から中央線で1時間。車窓からは高層ビル群に変わり、春を待つ山並みが広がる。藤野駅で下車し事務所を訪ねると、奥からスラリと背の高い修子さんが笑顔で出迎えてくれた。

 1960年(昭35)9月、神奈川県津久井郡藤野町(現相模原市)で3人きょうだいの2番目として生まれた。地方公務員の父とゴルフ場でキャディーをしていた母、祖父母の7人家族で、成績表には「いつも“明朗活発”と書かれてました」。

 父親ゆずりの長身で、中学時代に1メートル67。バレーボール部でアタッカーとして活躍し、3年生の時にはキャプテンに選ばれた。

 高校は八王子実践へ。バレーボールの強豪校としても知られるが、修子さんはバスケットボール部に入部。すぐにレギュラー入りし、正確なシュートで得点を量産した。運動神経抜群のスポーツ少女だった。

 卒業後は秋草学園短期大学の幼児教育学科に進学。家業の釣り宿を手伝っていた一さんと出会ったのもこの頃だった。

 「遊んでいたグループの中にいて、最初、外見がいいなって」。結婚写真でみる一さんは、映画スターのようにハンサムだ。修子さんから積極的に話しかけ、それを静かに聞いてくれる一さん。何げない優しさにも心ひかれた。

 やがて、一さんが操船するボートに修子さんも乗船し、夜のヘラブナ釣りのお客さんに弁当を届けるまでの間柄に。仲間から恋人へと発展していった。

 23歳で結婚。保育士から女将へと転身した。釣案内所は一さんの父・嘉一さんが国鉄職員から脱サラをして始めた。一さんが生まれた61年にキャンプ場をオープン。次いで遊覧ボートと釣案内所を開設した。

 68年、中央自動車道の八王子と相模湖間が開通。都心からのアクセスが便利になり、ゴルフ場やレジャー施設が建設された。相模湖周辺は一大観光スポットとなった。

 結婚した年、100人のお客さんにも対応可能な宴会場が完成。調理師免許を持つ大女将の富子さん(85)とともに、修子さんは宴会を切り盛りした。

 釣りの受け付けを午前6時半から行い、午前10時ごろから料理の仕込みを始める。宴会後の片付けが終わると日付が変わっていた。毎日があっという間に過ぎていった。

 31歳の時、長男の恭平さん(26)を出産。「勤労感謝の日(11月23日)で朝からお客さんの車がたくさん止まっていた日でした」。

 その1カ月後の忘年会前には現場に復帰。恭平さんをおぶって仕事をこなした。「保育士をしていたのでね」。女将業と子育ての両立も持ち前のバイタリティーで乗り切った。

 現在、恭平さんも案内所を手伝っている。5年前、ゴールデンウイークが始まる直前に一さんが腰を痛めたのがきっかけだった。父親と同じくお客さん思いの仕事ぶりは常連さんにも好評だ。

 修子さんの楽しみは、中学の時の友達と年1回の旅行に行くこと。「今度、行き先を決める食事会なんです」。そう話す笑顔は、春の日差しが反射する湖面のように輝いていた。

 ▼釣況 東日本釣宿連合会所属、相模湖・天狗岩釣案内所=(電)042(687)2006。

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