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J自社ロッド開発 S支店切り盛り B敏感時流キャッチで三代目隆盛

[ 2017年10月27日 07:13 ]

スポニチのタチウオ釣り大会で117センチのドラゴンを釣り上げた前浦さん
Photo By スポニチ

 【根ほり葉ほりおじゃま虫ま〜す】おじゃま虫陸に上がる。台風21号余波のせいだ。葛西橋・第二泉水のタチウオ船で釣り具「つり吉」常務、前浦利光さん(31)の横に座る予定だった。ところが出船不能。やむを得ずお店で、となった。 (スポニチAPC 町田 孟)

 前浦さんは3代目だ。とかく世間では言いつのられる身分でもある。祖父である会長の誠八さん(83、写真<右>)が創業、今年で36年目。社長が父・昭仁さん(57、同<左>)、専務を母・由紀子さん(52)が務める。従業員10人ほどの家族経営。足立区の綾瀬本社の一角が住まいで「絆が固い」のが強みだ。

 江戸川区大杉に支店があり、そこを任されている。「駄目になったらっていう覚悟はしている。でもそうならないようにしなきゃならない」。業界も厳しい状況に置かれている。加えて1万点は超す商品を扱うのだから若旦那気分では務まらない。妹は嫁ぎ、大学生の弟も後を継ぐ気配はないという。長男にかかる責任は重くなる。

 心に決めていることがある。船代はもちろん道具をそろえるのも自腹。しかも「売り値で買う。自分を特別扱いしていたら、他の人と話していて負い目を感じてしまう」。身内に甘くは崩れゆくパターン。越えてはいけない壁だろう。

 「小学生のころから後を継ぐことを夢見ていた」。ただ、釣りにのめり込んでいたわけではない。「中学の途中からサッカー。肥満児だったし」。大学時代も海よりは芝の上。密接に関わるようになったのは卒業後から。釣り具メーカーに就職、3年間経理畑を勉強して6年前に実家に就職した。

 社長からの教えは「常にどんな店にしたいか明確なビジョンを持っているように」。こまごまとした指示はないそうだ。

 現在は趣味と実益を兼ねて「月に1、2回。自分も楽しむけれど情報収集も」。メーカーへの報告や商品開発に役立てるためだ。できるだけ「お客さまと一緒に行くようにしている」。性格を知ることもできるし、密着度が増すからだ。それにしても年中無休の中でのやりくりは楽ではない。

 目下タチウオがメインターゲット。「夏の浅場より秋から冬の前くらいまで、水深50メートル以上が得意」。

 「つり吉」の売りは大物、深海だ。「何か特長をと社長が特化させた」。時代を乗り切る決断だったに違いない。泳がせ、中深場、深海など13本の特製ロッドを販売している。

 これから少子化とともに若者客も減少傾向だ。やはり新しい対応が求められる。ルアー系も狙いの一つだ。既にロッドも開発して販売中。タチにもいいカーボンのライトゲーム用。その名も「DIANA」。しっかり者の3代目だ。

 9月に行われたスポニチのタチウオ釣り大会で自己最高117センチドラゴンを上げ総合3位入賞。そこで必殺「前浦3カ条」。(1)リズムを一定に(2)餌は真っすぐ(3)フラッシャー。「餌を取られても効果がある」。お薦めなのがTOHOの「オーロラスレッズ」ストレートタイプ。色は超ケイムラ。量は束を3つに分けた程度。20センチに切って真ん中を糸で結び折り返して長さ10センチに。これを同社の「ムラムラパイプ」に結びつける。その際パイプにはつまようじなどを通してハリの通路を確保。仕上げに接着剤を1滴。

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