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春まだ遠い北アルプス麓 ヤマメ1匹が貴重な宝に

[ 2017年3月31日 05:30 ]

気温と水温の差が激しい渓で竿を出す          
Photo By スポニチ

【渓流釣れ釣れ記】

 春先の釣行はどこにするかで悩むことになるが、そんなときは、最近は、長年気にかかっている場所に出掛けることにしている。桜の開花が話題になっている東京から、冬真っただ中の岐阜県、北アルプスの麓へ出かけたのも、そんな思いからである。(スポニチAPC 綾部 丹堂)

◎出たとこ勝負

 高原川水系の蒲田川へは幾度も出掛けて、その時々に、面白い釣りをする運にも恵まれた。

 しかし、この渓が本当の持ち味を発揮するのは3月で、この時季には釣行していない。

 この川の持ち味というのは、地域的にはまだまだ春遠い3月に、毛バリでイワナ、ヤマメが釣れることである。

 穂高連峰を水源とし、山々が白銀に眠る時季に、この渓がメイフライのハッチ(カゲロウの羽化)を見せるのは、国内有数の奥飛騨温泉郷を流れるからだ。

 流域の豊富な温泉水が流れ込み、地熱も高いということが理由である。

 気温は真冬であっても、流れは川虫にとっても、魚たちにとっても、適水温を保っているのだ。

 このように釣りの環境条件は非常にいいのだが、その裏返しに以前からフライフィッシングの人気スポットとして知られ、釣り人銀座になっている。

 この悩ましさが、この時季の釣行を避けてきた理由なのだが、今回思い切って出掛けてみた。なじみの渓ながら、時季的には初体験釣行である。宿の予約などもあって、現地天候条件はいつものように出たとこ勝負の釣行である。

 松本ICで降りて山道にかかると辺りは雪景色で、安房トンネル直前では、車の外気温計は0度を示していた。東京で桜の開花が話題になる時季に北アルプスはまだ冬だと実感することになった。

 目的地の栃尾には昼すぎに着いた。いつもの、三木商店で入漁券を購入しながらの情報収集をする。分かったことは前日雪だったこと、それで一面の雪景色に納得、そのため入渓者は少なめだということだ。そして水温の関係で有望エリアはメガネ橋の前後ということも分かった。

 早速、蒲田トンネル手前の駐車場に車を止め、釣り支度にかかったが、釣り人のものらしき車が4台駐車していて、そこから見える渓には釣り人2人と厳しい状況である。

◎強い風に苦戦

 下り立った渓は、下流からの冷たい風で、気温3度よりもはるかに厳しい体感温度で迎えてくれた。しかし驚くほどの温かさを感じる水温は11度だった。

 初めて味わう、何とも奇妙な条件でのテンカラ開始となった。先行者が見えるのも厳しい状況だが覚悟を決めて、テンカラならではの丁寧な攻めで、ポイントにアタックしていくことにする。

 ただ下流からの強い風には苦戦を強いられることになった。風よけになりそうな岩陰の水面に虫が飛ぶのは確認でき、水温には納得するが、残念ながらライズは見られない。

 結局、苦戦のまま時間が過ぎていく。メガネ橋下流の落ち込みプールに狙いを定めて黙々と竿を振りフライマンが何となく神々しく見えてくる。

 いずれにしても魚の顔は見たいものだと、こちらも遡行(そこう)を続けたが、水面は静かなままである。時間も4時を回り、今日は終わろうかと、諦めかけたところで、もう一度ポイント情報を見直した。

 思い切って、水温に問題がありそうな下流へと移動してみた。水温条件は悪いにしても、釣り人のプレッシャーが少ないポイントを考えてみたのである。

 なおかつ、毛バリでは狙い難いポイントを探してみた。珍しく樹木が水面に張り出し、そのヘチがたるみになった、毛バリではやっかいなポイントで、水面がはじけた。

 ひと走りして、手元に寄ってきたのは、活性の高い待望のヤマメだった。これが今回釣行の貴重な1匹になった。

 翌朝宿で目覚めると、窓からの景色が変わるほどの雪が降っていた。雪降る中の露天風呂を味わって、今回の釣行は終わった。

 ▼釣況 高原川漁協=(電)0578(2)2115。三木商店=(電)同(9)2290。日釣り券1500円。

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