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【全国ジャケ食いグルメ図鑑】秋田の謎老舗 やや戸惑う鬼ウマうどん

秋田・鷹巣「池田屋」の外観
Photo By スポニチ

 人気ドラマ「孤独のグルメ」の原作者、久住昌之さんが外観だけで店選びする「全国ジャケ食いグルメ図鑑」。秋田・鷹巣で見つけたのが老舗の雰囲気漂う「池田屋」。入り口ではタヌキの置物がにらみを利かせており、メニューは「だまし」に「酔いざめ」と見たこともない謎の名前が続く。一瞬化かされたかと思いつつ、一口食べると、そこには“鬼ウマ”な世界が広がっていた。

 秋田内陸縦貫鉄道に乗った。約2時間100キロの鉄道旅だ。紅葉の季節を過ぎていたので期待していなかったが、よかったなぁ。観光客より地元のおばあちゃんとかが多くてすいていた。それをいいことに、靴も脱いでボックスシートを自分の部屋のようにしてくつろいだ。一両車なのにトイレもあるし車内販売も来る。缶ビール飲んでみかんも剥(む)く。ゴキゲン。

 いやいや、その話ではない。その列車に乗る前に、北の基点である鷹巣でお昼を食べるために歩き回り、ジャケット(店構え)で決めたのがここだ。

 「池田屋」。ちょっと待ってくれ。大きな横看板は「池田屋」だが、上の縦看板と、路上看板は「池田や」だ。しかし、ボクの経験で、屋号がのれんと看板で違っているような店は、地味でも常連さんのしっかりついた老舗だ。しかし「池田屋」の看板は「池田や」から一軒分ずれている。別の店かと思ったがそうでもないようだ。どういうことだ。「池田屋」部分は中に冷蔵庫などが見え、とても店舗ではない。何があったのか?とにかくユニークなジャケットだ。

 入り口のタヌキに微妙な表情で見つめられると複雑な気持ちになる。 いいのかこの店で?と思うも、のれんをくぐって入店。

 カウンターと奥にテーブルが4つほどあり、カウンターに座る。メニューを見ると、見慣れない蕎麦(そば)がある。「だまし」「酔いざめ」「ひもかわ鍋焼きうどん」「鬼鍋うどん」。ラーメンなら分かるが、うどんそばで「もやし」というのも聞いたことがない。

 店の人に聞くと「だまし」というのは、油揚げと揚げ玉が両方入っているものだった。キツネとタヌキのだまし合いということか。「鬼鍋」というのは「ひもかわ」にキムチが入っているものと分かった。でもそもそも「ひもかわ」が分からない。説明が引き気味で早口だったので、なんとなく詳しく聞きにくかった。さらに「酔いざめ」もなんだか聞けなかった。東京に戻ってネットで調べたら、ワカメと梅干しが入ったものだった。なんとなく二日酔いによさそうだ。でもこういう分からない料理も面白い。何でもかんでもすぐ分からなくたっていい。

 「ひもかわ鍋焼きうどん」(800円)は、冬季限定と書いてあったので、「鬼鍋うどん」(1000円)を頼んだ。冷え込みそうだったので、キムチ味が恋しかったのだ。

 出てきた鬼鍋うどんの麺はきしめんの厚みと幅が3倍ぐらいありそうな平打ちだった。東北によくある揚げ玉を円板状にまとめたのが載っている。食べているうちにほぐれてくるこれも好き。そこにかまぼこと三つ葉、そして青ネギがたくさん入っている。このネギが柔らかくて甘みもあり青い部分が中がとろりとウマイ。それらの下にはキムチがたくさん。小皿にたくあんが2切れついているのも楽しい。

 そしてひもかわ麺、見た目より食べやすく、うまい。汁もキムチの旨(うま)味と辛さが溶けだして、だんだん美味(おい)しくなる。見た目ほどボリューミーではなく、ペロリと食べきった。食べているうちに汗ばんできたほどで、この時期には最高。このセレクト、正解。

 ところが、だ。メニューの裏に「和風ラーメン」「味噌ラーメン」「葱(ねぎ)味噌ラーメン」というのがあるのは知っていた。だが、まあ、今は鍋焼きだな、と確信を持って頼んだのだが、僕の後から入ってきたおばちゃんが隣に座って「ラーメン」と頼んだ。「和風ラーメン」だろう。これが、物凄くうまそうだった!細い縮れ麺で、スープは色濃いめのしょう油スープなんだが、色の割にあっさりしていそうで、具も小さなチャーシューとメンマとネギ。おばちゃんは、ボクがうどんを食べてる最中に来たのに、先にツルツルっと食べ終わって、帰った。そのスピード感がまたウマそうに見えた。今日の自分の鬼うどんの選択は、決して間違ってはいないと思いつつ、今度来たら絶対ラーメンを食べるぞ!と固く決意するほどだった。こういう体験も珍しい。

 後から来た男性客が店に持ってきた柿を、店員さんがボクにも切って小皿に出してくれた。今回、秋田の飲食店に何軒も入ったが、総じてお客さんも店員さんも無口で押し黙っていて、店内にはテレビの音だけして、異様に静かだった。でもこうして甘くて柔らかい柿を食べると、秋田の人の見えにくい内面に触れたようでうれしかった。

 しかしカウンターの招き猫のヒゲは、盛大に前面に突き出していて、攻撃的で面白かったぞ。

 ◇池田屋 創業60年の老舗そば処(どころ)。約50種類ある麺メニューは全て自家製麺。ざるそば500円、和風ラーメン500円、ラーメンセット(焼きおにぎり付き)700円。秋田県北秋田市松葉町12の20、JR鷹ノ巣駅から徒歩5分。(電)0186(62)2411。営業は午前11時~午後2時、午後6時40分~11時30分。日曜定休。

 ◇久住 昌之(くすみ・まさゆき)1958年、東京都生まれ。漫画家、漫画原作者、ミュージシャン。81年、和泉晴紀とのコンビ「泉昌之」として月刊ガロにおいて「夜行」でデビュー。94年に始まった谷口ジローとの「孤独のグルメ」はドラマ化され、新シリーズが始まるたびに話題に。

[ 2016年11月25日 12:00 ]

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