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【全国ジャケ食いグルメ図鑑】千葉鴨川市・大海で品数も味もにじゅうまるよ!!

[ 2018年4月20日 12:00 ]

「まるよ」の外観
Photo By スポニチ

 人気ドラマ「孤独のグルメ」の原作者、久住昌之さんが外観だけで店選びをする「全国ジャケ食いグルメ図鑑」。飲食店では厨房(ちゅうぼう)にオーダーを入れる際、レモンスカッシュを「レスカ一丁!」と言うなど、よく略語を使いますよね。でも、今回のお店はその逆。不思議なうまさが注文の仕方にまで漂う千葉・外房の老舗です。

 千葉の鴨川市・太海の近くで見つけた。

 やっぱりジャケット、つまり店構えがシンプルでいい。平仮名3三文字で「まるよ」。暖簾(のれん)も同じ。字体は違うが、どちらも温かみと親しみが感じられる。

 なぜか看板が、店名以外、白のペンキで塗りつぶされている。だが「きそば・中華・磯料理・民宿」というのが透けて見えている。確かに民宿はやっていないようだ。でも他の料理もやめたのか?ならばまるよは今、何を売っているのだろう?など余計なことを考えながらも、この雑な塗りつぶしに、懐かしいようなうまさの胸騒ぎがする。

 店の前にちいさな石碑のようなものが立っていたことに、帰宅してから気がつく。写真を拡大してみると、

 「来る人 又(また)来る人も 福の神」

 と彫ってあった。いいじゃないか。

 暖簾をくぐり、入店。オーソドックスな蕎麦(そば)屋の風情だ。がっしりした木のテーブルが5卓。入って右手は座敷になっている。

 テレビがついていて、昔からの店だろうことを感じる、落ち着きと、馴染(なじ)みやすいざわつきがある。昼時だったので3組の客がいたが、旅行者と思われる人はボクだけで、あとは地元の人とすぐわかるいでたちだった。

 ビールを頼み、メニューをじっくり読む。中華の部はラーメン、タンメン、味噌ラーメン…焼そば、タンタンメン。うどん・そばも普通になんでもある。野菜炒めやニラレバやエビフライやカツの定食もある。もつ煮、餃子(ギョーザ)、タコ唐揚げなどの一品料理も充実している。なんだ、看板の文字、消すことなかったじゃないか。

 「おすすめセットメニュー」が壁にあり、麺類+350円で、ミニ天丼、ミニねぎとろ丼、ミニカレーライスなどが付けられる。実際それを食べている客が多かった。

 メニューの定食のところに「※単品でもご用意できます」と書いてあったのを発見、アジフライを注文した。これがちゃんとおいしかった。大ぶりで、身が厚く、新鮮なのがわかる軽さ。気取りのないガシッとしたコロモ。ソースをかけてカラシを塗ってかぶりついたら、ビールにバッチリのうまさだ。さすがは外房の店だとおもった。

 そしてメインを迷っていたら、隣に座った30歳ぐらいのスーツを着た客が、ボクの内心を見透かしたように、

 「ここ、何食べてもおいしいですよ」

 と声をかけてきた。その言葉に背中を押され、未知のメニュー「磯ラーメン」を頼んだ。ラーメンが500円で、磯ラーメンは900円。ちょっと値段が張る。どんなものだろう?海苔(のり)とかネバネバの海藻とか蟹(かに)とか、磯くさいものがいろいろのっているのだろうか?

 注文したら、店のおばちゃんが、厨房(ちゅうぼう)に向かって、「はい、貝の入ったラーメン一丁!」と言った。なぜ磯ラーメンと言わない?と思って、ボクなりに考えたのだが、忙しいときなどに調理人が「味噌ラーメン」と聞き間違えないようにじゃないかと思った。余計なお世話だが。しかし「貝の入った」の貝はなんだろう。アサリかな?

 出てきた磯ラーメンは、醤油(しょうゆ)ラーメンにワカメとボイルされたサザエをスライスしたものがのったものだった。

 これが大正解!ワカメもおいしいし、サザエも本当においしい。メンマやチャーシューともぶつかってない。スープも懐かしくやさしい味で、麺も縮れのないタイプで、スルスル入って来る。あっという間に食べてしまった。隣の客にお礼したい気分。

 店を出て、あぁうまかった、と振り返って見たが、やはり白く塗りつぶされた看板の横っ面にも、いい味が浮き出ている。「手きそば 打中華 ち」みたいで。

 ◇まるよ太海店 1963年(昭38)創業。ざるそば600円、天ぷらそば700円なども人気で、丼物、定食類も充実。千葉県鴨川市太海2319、太海駅から徒歩5分。(電)04(7092)1020。午前11時〜午後8時。不定休。

 ◆久住 昌之(くすみ・まさゆき)1958年、東京都生まれ。漫画家、漫画原作者、ミュージシャン。81年、和泉晴紀とのコンビ「泉昌之」として月刊ガロにおいて「夜行」でデビュー。94年に始まった谷口ジローさんとの「孤独のグルメ」はドラマ化され、新シリーズが始まるたびに話題に。舞台のモデルとなった店に巡礼に訪れるファンが後を絶たない。フランス、イタリアなどでも翻訳出版されている。

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