PR:

相次ぐ木造船の漂流・漂着。工作員を乗せた小船は大しけの波間に消える?

 【小池聡の今日も手探り】日本海側で北朝鮮籍とみられる木造船の漂流・漂着が相次ぎ、海上保安庁がデータの集計を始めた2013年以降で今年は既に最多を記録した。

 海保が12月13日正午現在で集計したデータ「朝鮮半島からのものと思料される漂流・漂着木造船等の確認状況」によると、

 13年 確認件数80 遺体確認件数2(4遺体) 生存者確認件数0

 14年 確認件数65 遺体確認件数0 生存者確認件数1(生存者4人)

 15年 確認件数45 遺体確認件数8(27遺体) 生存者確認件数1(生存者1人)

 16年 確認件数66 遺体確認件数2(11遺体) 生存者確認件数0

 17年 確認件数83 遺体確認件数6(19遺体) 生存者確認件数5(生存者42人)

 データ公表以降も、青森、秋田、山形、新潟の各県で漂着船や遺体が発見されている。まだまだ続きそうだ。

 注意を引くのは全体の件数のみならず、生存者の数。42人という今年の数字は突出している。この内訳は転覆船や漂流船が3件で24人。残る2件は北海道松前町の無人島に接岸したものと秋田県由利本荘市に漂着したもので、それぞれ10人と8人。松前町の事案では島にあった発電機を盗んだとして船長ら3人が逮捕され、由利本荘市の8人は遭難者と認定された。

 また、漂流と漂着の割合も気になるところだ。83件のうち、11月1日から12月13日正午までの1カ月半に確認された漂流・漂着船は52。これらの確認地点を海保が日本地図にマーキングした位置概略図を見ると、漂流より漂着したものの方がかなり多い。巡視船艇や航空機による日々の沿岸警戒をすり抜けたということになる。

 一連の漂流・漂着については、日本の排他的経済水域(EEZ)内にある好漁場「大和堆(やまとたい)」でイカ漁など違法操業をしていた漁船が荒天で遭難したものとみられているが、菅義偉官房長官は9日の講演で、「(乗員は)工作員の可能性もある」「(北朝鮮)軍所有の船が漂着している」などとの認識を示した。

 無人島での窃盗事件を受け、北海道議会は14日、多くの道民が大きな不安を抱えているとして沿岸警備の強化などを国に求める意見書を全会一致で可決。12日に新潟県柏崎市の海岸で木造船と遺体が見つかった地点は、近くに小学校と中学校があり、東京電力柏崎刈羽原子力発電所は目と鼻の先。近隣住民は不安を募らせていることだろう。

 密航斡旋(あっせん)組織「蛇頭」が暗躍した中国人集団密航事件が頻発していた1990年代、日本海もカバー海域となっている海上保安本部の警備部門責任者の1人から聞いた話が思い出される。趣旨は次の通りだ。「彼らは沖合で大型船から小型船に乗り移り日本を目指す。目視やレーダーなどで不審船の監視に当たるが、しけの季節になると、波間に入ってしまった小型船を見逃すことも考えられ、また、波の高さの関係などからレーダーで捕捉できないケースもある。海に囲まれた日本。大きな声では言えないが、密航成功率は9割以上ではないか」。

 その後、警戒監視の精度はどれほどアップしているのだろうか。海上保安庁の英訳は「Japan Coast Guard」。中国の公船や漁船による領海侵入が繰り返されてきた尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺警備に重点を置かざるを得ない中、ほかの海域での態勢に影響は出ていないと言い切れるのだろうか。北朝鮮情勢は予断を許さない。消耗戦を迫られかねない海保の位置付けはどうあるべきか。考えさせられる。(編集委員)

 ◆小池 聡(こいけ・さとる)1965年、東京都生まれ。89年、スポニチ入社。文化社会部所属。趣味は釣り。10数年前にデスク業務に就いた際、日帰り釣行が厳しくなった渓流でのフライフィッシングから海のルアー釣りに転向。基本は岸から気ままにターゲットを狙う「陸(おか)っぱり」。

[ 2017年12月17日 10:00 ]

Webtools & Bookmarks

注目
アイテム

ニュース

注目アイテム

スポニチwikiランキング

      人気ニュースランキング(社会)

      ※集計期間:01月24日00時〜01時

      » 続き

      【楽天】オススメアイテム
      クイックアクセス