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【イマドキの仕事人】“第2の葬儀”「お別れ会」はフリースタイル化

野球が大好きだった故人のためにグラウンドをイメージした祭壇の前には献球として野球ボールがささげられた
Photo By スポニチ

 “第2の葬儀”として、「お別れ会」が一般に広がりをみせている。儀式・儀礼にとらわれないことから、自由な形で追悼できるのが人気の秘訣(ひけつ)だ。遺族や友人らの依頼を受けて、一緒に故人らしい別れの場を具現化するプロデューサーも現れた。依頼者の多くは葬儀を済ませてから改めて追悼の場を求めているという。その背景には葬儀の簡素化という時代の変化も映し出されていた。

 野球が大好きだった名古屋市の50代男性ががんで亡くなって5カ月。「お別れ会プロデューサー」の井野貴亮(38)が手掛けた「父ちゃんのお別れ会」は、男性の22回目の結婚記念日に合わせて開かれた。

 キャッチャーミットを構え笑顔を浮かべる男性の遺影の前には、グラウンドを模した祭壇。幕開けは、男性によく似た長男が捕手を務める始球式。野球の観戦チケットに見立てた特製の招待状を握りしめた参加者が野球ボールを受け取り、祭壇へささげる。花じゃなくボールだから“献球(けんきゅう)”だ。会場に設けられた寄せ書きは、185人の参加者の故人への感謝でびっしり埋まった。

 「この会はご主人と奥さまの生前の会話から生まれたものでした」と井野は振り返る。

 余命わずかの男性は病床で妻に対し「おまえが泣き崩れる姿をみんなに見せたくない」と家族葬を希望した。だが、少年野球のコーチをしており、町中の誰もが知っているような存在。「父ちゃんとお別れしたい人はいっぱいいるよね」と言う妻へ「だったら葬式が終わって半年ぐらいたったらお別れ会をして、感謝を伝えよう」と言い残し旅立った。

 男性の四十九日が過ぎてから、お別れ会プロデュースサービス「Story」を通じて妻から相談を受けた。「お別れ会をしたいが何をしたらいいか分からない」という妻の話に耳を傾ける中で「野球」「愛妻家」などのキーワードを見つけ、「野球一筋で生きてきた父ちゃんにありがとうを言おう」をコンセプトに準備を進めた。

 井野は元々、インターネット業界出身。企画やプロジェクトの管理者として働いていた。「このキャリアをシステムだけでなく世の中のために役立てることができないか」と思い立ち、15年1月、葬儀の総合情報サイトを運営する会社「鎌倉新書」へ転職。10カ月後、お別れ会のプロデュース事業を会社が始めることになり、前職で培ったスケジュール管理能力などを買われて立ち上げメンバーとなった。相談の多くは、葬儀を済ませた遺族や友人らがほとんど。「何をやりたいかはお客さまが持っている。まずはじっくり話を聞いてそれを掘り起こすのが仕事」と言う通り、過去の実施事例に一つとして同じものはない。酒が大好きだった会社員のために同僚が集まって居酒屋に祭壇を設け酒を酌み交わしたり、夫婦でガーデニングをするのが夢だったという女性は花であふれた古民家カフェで静かに送られた。参加者は「湿っぽくならずに故人のことを語り合いたいという気持ちを本質的に持っている」ことから、歓談や食事の時間を多めに設けるのが井野の流儀だ。

 お別れ会が台頭してきた背景には葬儀の簡素化がある。家族葬が主流になり、火葬だけで済ます「直葬」や通夜を行わない「1日葬」も増えた。お金をかけない傾向が強くなってきたことから、葬送業界がお別れ会を新たな鉱脈として見いだしたという側面がある。

 だが、根底には都市部への人口集中によって地域社会や檀家(だんか)制度が薄まっていることで、形式に縛られる人が少なくなっていることがある。井野は「弔うことは重要。葬儀がなくなることは決してない」とした上で「もう決まったレールの上で生きる時代ではなく、その人らしさを求める時代に来ているんではないでしょうか」と分析した。葬儀の簡素化に伴い、法要も縮小傾向。お別れ会に喪失感を埋める役割が求められるのは時代の必然といえるかもしれない。 =敬称略=

 《70〜80人の規模で費用80万〜100万円》これまでの実施例では、参加者70〜80人規模で会費1万円を集めて80万〜100万円前後。内訳は会場の使用料や飲食費、祭壇の費用やプロデュース代など。自由度が高い分、依頼主の要望を実現するためにかかる経費や参加者の人数によって費用は一件一件異なる。今年に入ってから「Story」には前年に比べて約3倍のペースで相談が寄せられるようになっているという。

[ 2017年4月10日 05:30 ]

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