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女性監督・芳賀美里
■お客様、スポンサーが魅力的だと思うレース作りを!

世界のトップに立つ大企業ですら撤退を余儀なくされるような厳しいレース業界において、27歳、美人、元レースクイーンなどという形容・経歴はなんの役にも立たない。そんなことは少し考えれば、誰にでもわかることだろう。では、一体、彼女の何が人を惹きつけるのか。なぜ人は彼女のチームをスポンサードするのか。その秘密を探ってみた。

──まずはレースクイーンになられた経緯を教えて下さい。

高校生の頃、芸能界とか華やかな世界に憧れていて、将来、エンターテイメントの世界で働きたいなと思っていました。そして、高校を卒業して東京に来て、何回か事務所が変わったんですが、私がモデルとして最後に所属した事務所がレースのスポンサー(スーパーGT)をすることになり、それがきっかけでレースクイーンをすることになりました。

──それがなぜ、モータースポーツの世界へ飛び込むことになったんですか?

レースクイーン時代にモータースポーツに触れ、この業界の仕組みや、スポンサーを獲得しそのお金でレースが成り立っているということを知り、私もやってみたいと思いました。そこで、レースクイーンをやらせてもらっていた1年間で、いろいろと仕組みを勉強し、私にもできるという手ごたえを感じたんです。そして、翌年にはスポンサーを獲得し、自分もレースクイーンとして活動しながら、女の子(レースクイーン)を集めてチームに派遣するようになりました。さらに、2004年には本格的に会社を設立し、スポンサービジネスに乗り出すようになったんです。

──具体的にはどのような活動だったのでしょう?

各スポンサーからお金(広告費)を集めてチームと交渉し、スポンサーが欲していること、たとえば、レースクイーンを使ってのサンプリングや、宣伝であれば、レースクイーンの枠をチームに確保してもらい、必要であればオーディションを行ったりしていました。また、ドライバーを使っての宣伝であれば、ドライバーのレーシングスーツにロゴを露出する交渉や、会社のイベントに参加してもらえるように交渉もします。モデル事務所がお金を払ってでもレースクイーンの枠をほしいという場合もありました。
つまり、スポンサーとチームに間に入る、いわゆる”スポンサーマネジメント”です。そうこうしているうちに、いろんなところから話を頂き、そのなかのひとつが、海外にドライバーを抱えているスポンサーの方々で、その抱えているドライバーのマネージメントをしてくれないかという話になったんです。これが世界に出て行くきっかけ、転機になりました。

──それが今日につながる、と。現在はチームの監督でもありますよね。

国内のレースでは、スーパーGTとフォーミュラ・ニッポンの監督をしています。海外ではGP2というレースに参戦していまして、日本人ドライバー含む3人のドライバーをマネジメントしています。また、今年からイギリスF3にもドライバーを出していますので、海外のレースにも行かなければなりません。

──では、日本とヨーロッパを行ったり来たりですか?

移動がホント大変ですね……。日本とヨーロッパ、レースを合わせると30戦ほどありますから。毎週エンジン音聞いていますよ……。夢にも出てきます(笑)。私は海外に住んでいるんですが、今年も一年の半分は日本で半分はヨーロッパという生活です。去年もきつかったですが、今年は日本のレースが増えた分、本格的に辛くなりそうですね。でもがんばりますよ!

──ところで、監督業とはどんなものなのでしょう?

みなさんが思われる監督像は、元ドライバーとか元メカニックなど、何十年とレースの世界に携わってきている人がやっていて、「ピットイン!」なんて指示する人が監督、というイメージですよね。でも私は元ドライバーでもないし、エンジニアの経験もありません。いまでこそ、やっとエンジニアが言っていることがわかりようになってきましたが、去年は専門用語ばかりで、さっぱり理解できませんでした。ですから、レースの大きな流れや、決定等は私がやりますが、基本的にレース中に細かい指示を出すことはありません。指示を出すのはうちの優秀なチーフエンジニアに任せています。では、何をやっているのかと言うと、チームにスポンサーをつけ、予算を管理し勝てるための体制作りをします。これが一番大事ですから。

──なるほど。ちょっと想像していた感じと違いますね。

そうですね。ではなぜ監督をしているかと言うと、レースもエンターテイメントの世界ですし、私が監督をすることによってスポンサーも面白いといってくれるし、実際、いまついて下さっている化粧品会社も私が女でなければスポンサードしてくれなかったと思います。
レースの世界はやはり速いチームが目立ちます。でも、私たちのように新規で参戦したチームだと、すぐに勝つのは難しい。普通にやっていたのでは、注目されません。そこで、女である私が監督をやることによって、メディアの注目度が上がり、スポンサーと会えるひとつのキッカケにもなりえると思い、監督をすることにしたんです。私は車を走らせるプロフェッショナルにはなろうとは思っていません。もちろん勉強はしますけど。そのかわり、スポンサーを獲得することが私の仕事だと思っています。

──レースの世界ではなくスポンサービジネスから入った芳賀さんならではの言葉ですね。

レースはエンターテイメント性だけでは駄目だし、勝てばいいという、速さだけを追求するだけでも駄目。見に来ているお客さんや、スポンサードしてくれる会社あってのことなので、そこを考えなくてはいけません。
ドライバーがサンダルや、だらしない格好でサーキットをうろうろしたり、ファンサービスをしなかったりなんていうのは論外です。夢を売っている仕事なんですから。私は自分のドライバーにはいつもピシッとするように言っています。ドライバーも車も”広告”と考えたら看板のようなもの。これを青山の一等地の看板にするのか、山奥の看板になるのか。私はチーム、ドライバーの広告価値を高めるための努力をしていこうと考えています。

──では、今後の目標を教えて下さい。

日本の活動としては、フォーミュラ・ニッポンとスーパーGTがあります。フォミュラーニッポンについてはドライバーがルーキーなので、まずドライバーの育成が第一と考えています。スーパーGTは2年目勝てる体制で臨みます。絶対勝ちますよ!
海外の活動は今抱えているGP2ドライバーをF1ドライバーにすることです。チームを強くし、広告価値を上げ、弊社のスポンサーになりたいという企業がもっと出てくるようにがんばります。

──最後に読者へひとこと、メッセージをお願いします。

私、25歳になったら男になりたいと真剣に思ってました(笑)。25歳までは女で、若いうちが勝負だと思っていたので。実際、20代前半は、いろいろな社長さんと仲よくなり、アドバイスや、協力を頂けた。けど、それも若いうちでしょ? その点、男性は30代、40代が花盛りっ! 女の20歳とかと同じなんじゃないでしょうかね。もし、今の仕事が嫌で何か考えているとしたら、今やらないでいつやるの?という感じです。独身で守るものないんだったら、失敗しても失うものはありません。ゼロからプラスにしていけるかどうかは自分の気持ち次第ですよ!

質問の趣旨を瞬時に把握し、的確に回答する芳賀美里さん。しかも、決して”うわべ”だけの言葉ではない。自身の経験・信念に基づいた、熱い言葉が返ってくる。この洞察力の深さ、力強さが彼女の魅力なのだろう。スポンサーが彼女に惹かれる理由もよくわかる。

インタビュー直後の4月12日、彼女の言葉通り、GT300第2戦で、ディレクティブモータースポーツは見事優勝を果たした。27歳・美人・元レースクイーン。彼女にまつわる形容詞は、確かに人の目を惹きつける。しかし、レース業界の体質をも変えようとする独創的なアイデアと行動力、スマートさ、そして実際に勝ち得た結果を目の当たりにすれば、そんな形容詞がいかにちっぽけで些細なことかを実感することになるだろう。

<プロフィール>
芳賀美里(はがみさと)1979年生まれ。
株式会社ディレクシブ代表取締役社長。
日本進出を目指すヨーロッパの企業と提携、事業拡大を目指し、モータースポーツを通して日本とヨーロッパで広告宣伝を展開。自身は監督も務める。
会社ホームページ
http://www.direxivmotorsport.com/
芳賀美里さんのブログ
http://blog.livedoor.jp/misato_haga/
【後藤ひろし(肝臓公司)】
『HotDog・PRESS』(講談社)の編集者を経て、フリーライターに。好きな酒は芋焼酎。
「編集プロダクション肝臓公司」 http://kanzo.jp/
 

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