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堀監督は自らの哲学で戦うべき レッズのアイデンティティとは?

練習で笑顔をみせる浦和・堀新監督
Photo By スポニチ

 やはり後任は堀孝史コーチだった。

 ミハイロ・ペトロヴィッチ監督を解任した浦和レッズは、ゼリコ・ペトロヴィッチ元監督の際と同様に、内部昇格で急場をしのいだ。

 確かにシーズン途中の時間的な余裕がないなかで新たな指揮官の下、新たな戦術を取り入れるのはリスクが高い。今シーズンはチームを、選手を、そして前監督の戦術を知る人物に任せるのは理には適っている。ただ、これで胸を撫で下ろすことは到底できない。

 何も堀監督がどうこうではない。しかし、何年経ってもピンチのときに同じ人物に頼るという事象に、強化をいかに考えているのか、監督の存在をどう捉えているのかに疑問が生じる。

 山道強化本部長は堀監督起用について次のように語っている。

 「5年半、ミシャの指導の下で一緒に歩んできて、経験も培ってきた堀さんに任せて、現状を打破して、改善して、やっていってもらいたい」

 淵田代表はこうだ。

 「我々はミシャさんのサッカーを基本、継続していきたい。それができるのは堀さんだと思うんです」

 前監督と良い関係を築いてきたことは十分に理解できる。それでも「改善の兆しがあまりみられなかった。新しいものを取り入れなかったら、タイトルは勝ち抜けないのではないかと考えました」(山道強化本部長)との理由で解任した監督のサッカーを、それでもどこまでも信奉し、後任監督に強要するかのような発言をする。どんなにサポーターやファンが危機感を募らせても「ミシャ」「ミシャさん」を「全面的にサポートしていく」と、なかば暢気とも思えるほどの信頼を寄せて判断してこなかったツケを、「堀さん」に背負わせているのは合点がいかない。

 個々の監督には個々の哲学がある。「ミシャさん」のサッカーはミハイロ・ペトロヴィッチというプロの監督にしか継続できないのだ。それを安易に「堀さん」なら継続してくれる、という趣旨の発言を起用の理由として語るとは、前監督にも現監督にも失礼な話だ。

 少し脱線するが、だいたいメディア対応という世間への扉である場で、いくら仲間だったとしても、責任ある者として「ミシャさん」「堀さん」はどうかと思う。呼び名だから細かいこと言うな、という意見はあるだろうが、呼び名は本人を呼ぶときに使用するもので、公に持ち込むものではない。「監督」と言えば済むことであるのに。

 ともあれ、5年半にも渡った前監督の体制で勝ち取ったのはルヴァンカップのみ(シーズン優勝は含めない)。ペトロヴィッチ前監督が優勝争いに絡むチームを創ったことはその通りであろうが、目標としてきた結果はついてこなかった。その責任が前監督だけにあると見る人は少ないはずだ。大きな責任はいったい誰に、いったいどこにあるのか。

 2017年、イビチャ・オシム元日本代表監督が病に倒れた際、岡田武史氏を後任に推した小野剛JFA技術委員長(当時)は、旧知の間だった人物を招聘しただけに、その重大な責任を肝に銘じていたという。

 「できうる限りのサポートをする。ただ、それには自らの懐に常に短刀を忍ばせていなければならない。いざというときになったらそれを迷わず振るう。岡田監督に対して、そして自分に対して。その覚悟は片時も忘れなかった」

 後日、氏がインタビューで筆者に語ってくれた言葉だ。後付けだよ、と言う人はそうすればいい。ただ筆者は、その真剣な眼と言葉によって貼り付けた空気をいまだに忘れられない。

 バイエルンを世界に名だたるビッグクラブに育て上げたウリ・ヘーネス元GMが来日したときの言葉も忘れられない。

 「GMの仕事を強化に括ってはいけない。むしろクラブやチームのアイデンティティを確立し、ファン層を拡大し、財政面に恩恵をもたらすことが優れたGMの条件となる。そのなかで強化が果たす役割は何なのか。それを理解しなければならない」

 堀監督は自らの哲学で戦うべきであり、強化のトップは“自分に対しても振るう”という覚悟で短刀を常に磨いておくべきである。そして、組織のトップは今もっとも必要なのが単に勝利なのか、それともそれ以外(それ以上)なのかを示していかなければならない。

 最後に個人的な思いを記す。“ミシャのサッカー”が終焉し、“堀さんのサッカー”への期待も高まっている。それは当然のこと。しかしながら、○○のサッカーの幹であり根っこである“レッズのサッカー”、そして“レッズのアイデンティティ”はどうにも棚上げされて久しい。勝てばすべてが解決する状態なのか?もっと根本的な議論、改革が求められるのではなかろうか(何度も書いてきた気もするが……)。(山内雄司=スポーツライター)

[ 2017年8月4日 14:30 ]

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