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【コラム】戸塚啓

リオ世代 レベルの引き上げ

[ 2016年4月15日 05:30 ]

練習後、U―23日本代表の手倉森監督(左)と話をする橋本
Photo By スポニチ

 半年の延長は大きい──4月11日から13日まで行われたU-23日本代表のキャンプには、最終予選に出場しなかった選手が11人招集されていた。全23人のほぼ半分である。手倉森誠監督のもとですでにプレーしたことのある選手がいて、初めて招集された選手がいた。

 手倉森監督はかねてから、「世代全体を成長させたい」と話してきた。最終予選を大胆なターンオーバーで乗り切ったのも、「五輪出場を決めても、成長にバラつきが生まれてしまうのは良くない」という思いからだった。

 3日間のキャンプを終えた指揮官は、「U-23世代の候補を広げることができた」と話し、「自分の仕事は困難になりましたけれど」と笑顔をこぼした。

 1月の最終予選で、予選敗退に終わっていたら──リオ世代の強化は終了していた。3月のポルトガル遠征も、今回の合宿も、5月のトゥーロン国際大会出場もなかった。

 最終予選の結果とは関係なしに強化が続いたとしても、意味合いはまったく違う。五輪は4年に1度の大会で、ほとんどの選手は一度しか出場のチャンスがない。かくも明確で大きな目標があるなかでの競争は、意図的に作り出せるものではない。

 13日に行われた清水との練習試合では、野津田岳人がゴールを決めた。

 試合後には「自分にとっては勝負の合宿だった。結果を残さないと次はないという覚悟を持ってやりました」と話した。チームの結成当初から招集されてきた彼は、ケガで最終予選に出場できなかった。そもそも、定位置を争う2列目は競争が激しい。パンチ力のある左足を持つ野津田でも、メンバーに食い込むのは難しい状況が生まれている。

 サンフレッチェ広島で出場機会に恵まれていないため、シーズン開幕後にアルビレックス新潟へ期限付き移籍した。それもまた、リオ五輪を見据えてのことである。

 今回が初招集だった富樫敬真は、「もう少し時間が欲しかったというのはあります」と口もとに悔しさを滲ませた。4-2-3-1の1トップで出場した横浜F・マリノス所属の22歳は、45分の出場でゴールネットを揺らすことができなかった。

 ただ、合宿を終えた富樫は、「五輪に行きたい気持ちが、これまで以上に強くなりました」と語っている。野津田や富樫だけではない。リオ世代のすべての選手たちが、18人の登録メンバー入りへ闘志を燃やしている。所属クラブからのアピールを、心に刻んでいる。

 手倉森監督の構想では、メンバーを広げる作業は今回の合宿で終了し、5月からは絞り込みの作業へ移る。オーバーエイジも睨みながらの競争が、リオ世代のレベルを引き上げている。(戸塚啓=スポーツライター)

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