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【コラム】戸塚啓

J2爆走中!湘南、強さの裏側 フロント陣“レジェンド”中心に一体感

[ 2014年5月2日 05:30 ]

第10節終了時(4月29日)で得点ランキングトップタイの7得点を決めている湘南のFWウェリントン
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 湘南ベルマーレが爆走している。開幕10連勝というケタ外れの強さを発揮している。
勝ちっぷりも圧倒的だ。10試合で1試合平均3点以上の33ゴールを叩き出し、失点はわずかに「4」である。実に7試合が無失点と、攻守がハイレベルに噛み合っている。いますぐJ1へ昇格しても、十分に戦っていけると思わせるほどだ。

 ピッチ外へ目を向けると、4月下旬に大倉智GMが社長へ就任した。かつて柏レイソルやジュビロ磐田でプレーした大倉氏は、札幌の野々村芳和氏らに続くJクラブOBの社長である。強化部長として現場の最前線に立ち、GMとしてクラブ全体に目配せをしてきた。責任企業を持たない湘南がどうあるべきかを、大倉社長は複数の立場で見つめてきた。

 「年間予算が少ないなかで、いかにいいチームをつくるか。湘南スタイルでJ1に居続けることができるのか」を追求していくと、大倉社長は話す。Jリーグにおける湘南の立場やクラブの実状を把握しているだけに、経営戦略は明確である。

 フロントスタッフには、クラブOBの名前がある。強化本部のテクニカルディレクターは、2009年に反町康治監督のもとでJ1昇格を勝ち取った田村雄三さんだ。営業本部長の坂本絋司さんも、09年の主力として活躍した。ともにクラブのレジェンドである。

 Jリーグ開幕から20年が過ぎたが、サッカー選手のセカンドキャリアはいまだ開発途上である。監督、コーチ、強化担当、スカウトといったポストを除けば、サッカーに関われるのはメディア関係ぐらいだろう。それにしても解説者だけといっていいもので、プロ野球ほど試合数が多くないゆえに、需要と供給はアンバランスだ。放送席に座るのは、大変な狭き門である。

 Jリーガーとしてキャリアを終えた元選手のほぼすべては、ビジネスシーンで働いた経験がない。だからといって、社会性がないわけではない。ユニホームではなくスーツを着ても、所属するグループに貢献できる元選手は間違いなくいる。

 Jリーグは社会貢献や地域貢献を打ち出し、Jクラブは最前線でその責務を担う。ただ、クラブが果たすべき役割のなかには、Jリーガーのセカンドキャリアを掘り起こすことも含まれているはずだ。「元選手だから」という固定観念にとらわれずに、適材適所の登用があっていい。

 湘南の練習場や試合会場で感じるのは、クラブの一体感である。現場とフロントのどちらか一方が頑張るのではなく、どちらかに寄り掛かるわけでもなく、ともにクラブを推し進めようという空気に満ちている。Jリーグ記録を更新している開幕からの快進撃も、フロントの下支えにチームが応えている結果と考えられる。

 冷たい雨に降られた4月29日の京都サンガ戦後、坂本営業本部長がポンチョを着ながら後片付けをしていた。現役時代と変わらない彼のハードワークぶりも、スタジアムに熱狂を運んでいる一因だ。(戸塚啓=スポーツライター)

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