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【コラム】戸塚啓

国内組のチェックは必要ないのか?韓国代表に見るW杯へのアプローチ

[ 2013年12月27日 05:30 ]

韓国代表の洪明甫監督
Photo By AP

 2014年の年明け早々にも、韓国代表が合宿を行なうようだ。1月13日に集合してブラジルヘ飛び、その後アメリカへ移動してテストマッチを3つこなす。帰国は2月3日を予定していると発表されている。

 11月の国際Aマッチに招集された韓国代表のリストには、ヨーロッパでプレーする選手が7人含まれていた。サウジアラビア、カタール、日本、中国のクラブに所属する6選手を加えれば、海外組は13人となる。

 ブラジルとアメリカを転戦する合宿は、国内組で編成されることになっている。韓国と対戦するコスタリカ、メキシコ、アメリカも、欧州でプレーする主力を欠くに違いない。ブラジルW杯への強化の意味合いは、さほど濃いものにはならないとも考えられる。

 ならばなぜ、洪明甫監督は合宿を行なうのか。かつては日本も、同じようなスケジュールでW杯を迎えた。

 06年のW杯ドイツ大会を目ざしたチームは、2月22日にアジアカップ予選を戦わなければならなかった。そこから逆算して始動し、2月10日にサンフランシスコでアメリカと、18日には静岡でフィンランドと対戦している。

 ジーコ監督には、もうひとつ目的があった。国内組のテストである。負傷から回復過程にある久保竜彦のコンディションを、ブラジル人指揮官は気にかけていた。当落線上の選手のチェックも進められ、前年夏の東アジア選手権(現東アジアカップ)でデビューした巻誠一郎が、国内組だけのチームで立て続けに先発する。「国内組をチェックする機会として有意義だった」とジーコはのちに振り返り、巻はドイツ行きのメンバーに名を連ねた。

 W杯南アフリカ大会を控えた4年前は、2月に東アジア選手権が開催された。このためチームは1月下旬に始動し、2月2日にベネズエラ戦を消化している。

 国際Aマッチデイにはないスケジュールで、テストマッチも組んでいる。4月のセルビア戦だ。「W杯の色々な状況で、こういう使い方なら必要になるんじゃないかという選手のテストも兼ねた」という20人のなかには、直前の東アジア選手権に参加していない永井謙佑、山瀬功治、栗原勇蔵、矢野貴章らが選出されている。果たして岡田監督は、セルビア戦で途中出場した矢野をW杯のメンバーに加えることとなる。

 ザック率いる日本は、FIFAのカレンダーに沿ったスケジュールを立てた。2014年最初の活動は、3月5日のニュージーランド戦である。国際Aマッチデイに沿ってW杯を迎えるのは、もちろん悪いことではない。先進国はどこも、FIFAのスケジュールで足並みを揃えている。

 大久保、川又、豊田らのチェックは、必要ないのだろうか。ニュージーランド戦に彼らが招集されたとしても、この試合はベルギー戦以降の空白期間を埋めることに主眼が置かれる。当落線上の選手のテストに、十分な時間が割かれるとは考えにくい。4月に予定される国内組の合宿に、公式戦に近いゲームを付け加えてもいいと思うのだが。

 韓国代表の洪明甫監督は、1月の合宿に誰を選ぶのか。ベテランの復帰や若手の吸い上げはあるのか。そこからW杯へ招集される選手はいるのか。日本とは違うアプローチでW杯へ臨む韓国の動向が、個人的には気になる。(戸塚啓=スポーツライター)

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