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【コラム】戸塚啓

東南アジアからの観光客をJリーグへ

[ 2013年10月26日 06:00 ]

 Jリーグが外国人枠の拡大を検討している。現在の3+1に、東南アジア枠を加える方向で調整が進んでいる。

 観光庁が発表しているデータによると、今年9月に日本を訪れた外国人観光客のトップ10に、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナムが入っている。タイやシンガポールでは旅行先として日本の人気が高く、円高の是正も追い風になっているという。

 現地でのテレビ中継によってJリーグの認知度を高め、中継先からレ・コン・ビン(札幌)のような有力選手が集まってくれば、日本を訪れる観光客の目的に「サッカー観戦」が加わるかもしれない。テレビを観る人とスタジアムへ人が増えれば、地元の企業にとっても投資価値は高まる。

 東南アジア枠を採用することによって、ヨーロッパへ注がれている東南アジア各国企業の視線を、Jリーグへ向けさせる本格的な足掛かりとしたい。一つの目的のための一つの施策とせず、複合的なメリットを生み出していくのだ。東南アジア枠の採用を観客動員増へつなげるには、広く異業種と手を結びたい。

 たとえば、家電量販店である。渋谷、新宿、池袋、秋葉原などターミナル駅近くの店舗は、東アジアや東南アジアからの旅行者が必ずと言っていいほど訪れる場所だ。お店側も集客に力を入れている。

 日本にやって来る外国人観光客を、繁華街や観光地だけに止まらせるのはもったいない。たとえば、家電量販店で一定金額以上の買い物をしたら、Jリーグの当日券が割引になるようなタイアップはどうだろう。

 もちろん逆パターンもありだ。Jリーグのチケットを提示した外国人観光客は、家電量販店で割引を受けられるようにする。

 東南アジアの旅行客だけでなく、ヨーロッパ、オーストラリア、メキシコなどからの観光客にも同様のサービスを適応する。旅行会社、航空会社、各クラブのホームタウンや首都圏のホテルなどと協力して告知をしていけば、認知度も高まっていくと思う。

 10月のとある金曜日に、新宿駅から徒歩5分ほどの大型ホテルへ足を運んだ。ロビーで待ち合わせをしていると、様々な言語が耳に飛び込んできた。チェックインカウンターへ向かう人の列を、海外からの宿泊客が絶え間なく作っていた。

 Jリーグは15年からの2ステージ制を決めたが、並行して細かな施策を打ち出していくことも必要だ。日本人はもちろん外国人観光客が過ごす時間にも「Jリーグ」を溶け込ませることが、サッカーがこの国の文化となっていく大切なプロセスだと思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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