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【コラム】戸塚啓

CSKAモスクワの現状

[ 2013年4月20日 06:00 ]

黒ずくめの服装でモスクワへ向け出発するサッカー日本代表の本田圭佑
Photo By スポニチ

 本田圭佑がロシアへ出発した。ケガの治療と回復のためのトレーニングを4月16日までに終え、17日に機上の人となった。

 冬の中断期間があるロシアプレミアリーグは、3月9日から再開された。本田のCSKAモスクワは12日までに24試合を消化し、勝点56で首位に立っている。リーグテーブルの最上位を、昨年10月下旬から堅持してきた。

 ただ、2位ゼニトとの勝点差は「6」である。両チームの直接対決はすでに終わっているが、残り試合はまだ「6」ある。優勝争いは予断を許さない。CSKAに厳しい評論家は、終盤に急失速した昨季を持ち出し、すでに危険な状況にあると指摘している。イタリア人のスパレッティ率いるゼニトはリーグ2連覇中で、あらゆる意味でスキのない。

 ゼニトに比べて上位チームとの対戦を残すCSKAは、直近の2試合がヤマ場だ。21日は4位のスパルタク、28日は5位のルビン・カザンと対戦する。どちらのチームも、来季のヨーロッパリーグ出場権を争っている。CSKA戦は重要な一戦だ。負けられない。激しい攻防となるのは必至である。

 CSKAの現状はどうか。

 冬の移籍マーケットでヴァグネル・ラブが復帰し、長期離脱していたドゥンビアが鮮烈に戻ってきた。攻撃の陣容が、久しぶりに整っている。
 CSKAは4-2-3-1を基本布陣としているが、「3」にはロシア代表MFジャゴエフ、セルビア代表MFトシッチ、それにヴァグネル・ラブがいる。「1」はここまでチームを引っ張ってきたナイジェリア代表FWムサと、昨シーズンのリーグ得点王ドゥンビアの争いだ。

 さらに加えて本田が戻ってくれば、ヴァグネル・ラブを1トップで起用することもできる。ケガ人続出で控えが手薄だった昨季終盤を振り返れば、6人の選手が4つのポジションを争うのは悪くない。

 ところが、23節のディナモ戦ではヴァグネル・ラブが出場停止、ドゥンビアが体調不良で欠場してしまう。本田もまだ合流していない。ムサを1トップに右からトシッチ、ジャゴエフ、ツァウニャで2列目を組んだが、攻撃の迫力不足は著しいものがあった。ラトビア代表のツァウニャもトシッチも、客観的な比較で本田に見劣りする。ディナモとの引き分けは妥当な結果だった。

 ドゥンビアのコンディションが計算できないだけに、スルツキー監督は本田の復帰を待ち望んでいる。交代カードの充実をはかるためにも、21日のスパルタク戦で少なくともベンチには入れたいはずだ。

 最終盤に突入したロシアプレミアリーグで勇躍復帰し、CSKAを06年以来のリーグ優勝へ導き、6月のW杯予選とコンフェデ杯に臨む──本田自身にも日本代表にも理想的なシナリオだが、ロシアプレミアリーグは人工芝のピッチが多く、関節に負担がかかりやすい。リーグ優勝へ賭ける本田の思いは相当に強いと聞くが、復帰と離脱を繰り返した昨季の教訓もある。コンディションには十分に気をつけてほしいものである。肉体の小さな囁きさえも、決して無視をしないでほしいのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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