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【コラム】戸塚啓

「どこまでできるのか」ではなく、「どうやって勝つ」か

[ 2012年10月10日 06:00 ]

 サン・ドニでフランスと戦うとなると、11年前の記憶がどうしてもよみがえる。2001年3月24日のフランス戦だ。

 改めて振り返ると、難しいゲームになるのは最初から分かっていた。この年のJリーグは、3月10日に開幕している。海外組は中田英寿と西沢明訓だけだったから、代表選手のほとんどはリーグ戦を2試合戦っただけでフランスへ向かっている。ゲーム体力や試合勘を取り戻している段階だ。

 一方のフランスは、言うまでもなくシーズンのまっただなかである。イタリア、スペイン、イングランド、フランスでプレーする選手が集う彼らは、日本より格段にコンディションが良かった。

 さらに加えて、フランスはまさにピークを迎えていた。母国開催のワールドカップで優勝したチームは、マイナーチェンジを施してユーロ2000を制していた。いまなら4-2-3-1と表記されるフォーメーションのなかで、攻守における連動性を最大値まで高めていた。2002年のワールドカップ日韓大会を前にして、ジダンのチームは絶頂期を迎えていたと言っていい。

 日本代表のフィリップ・トルシエ監督は、システムを微修正していた。前年のシドニー五輪やアジアカップで成果をあげた3-5-2ではなく、トリプルボランチ気味の3-5-1-1に変更している。フランス戦は2001年初の国際試合だから、守備に軸足を置いたこの布陣はぶっつけ本番である。

 そうしたものを理解しつつも、僕は期待感を胸に秘めていた。日本代表が「どこまでできるのか」に期待をしていた。そして、「勝てる」とは思っていなかった。世界チャンピオンにして欧州王者との遭遇は、あくまでも日本代表の現在地を確認する機会だった。僕だけでなく、ほとんどの選手にとっても。

 今回は違う。

 欧州組も国内組もシーズン中である。所属クラブでゲームに出場していない選手もいるが、基本的にはコンディションへの不安はない。国内組も到着後6日目の試合なので、時差の影響も抜けているだろう。チーム全体で4回のトレーニングが確保できるのも大きい。

 11年前との何よりの違いは、代表選手の半分以上がヨーロッパでプレーしていることだ。フランス代表の選手は、ほとんどの日本人選手にとって未知の敵ではない。立体的な相手として対策を練ることができる。

 フランス相手に「どこまでできるのか」ではなく、「どうやって勝つ」のか。決して傲慢ではなく、そうしたスタンスで臨んでいい一戦である。また、そうした姿勢で臨まなければ、勝利などおぼつかない。獰猛なチャレンジャーとしてのメンタリティーを貫けるかどうかが、ゲームの行方を良くも悪くもする。(戸塚啓=スポーツライター)

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