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【コラム】戸塚啓

恒常的なリーグの繁栄のために

[ 2012年9月21日 06:00 ]

 欧州チャンピオンズリーグが開幕した。ミッドウィークの火曜日、水曜日に行なわれるゲームはタイトなスケジュールだが、ゲームのクオリティーは上質だ。

 過密日程に耐えうる戦力を持つクラブが多く、選手個々もタフだからこその上質さだろうが、ナイトゲームで行なわれていることも試合内容を高めている。それが商業的な理由によるものだとしても、選手の負担を抑えているのは確かだ。デーゲームに比べれば休養の時間は長く、暑さに悩まされることもない。

 先日のJ2リーグは対照的だった。9月14日と17日にリーグ戦が行なわれ、17日に中2日でアウェーへ乗り込み、しかも猛暑のなかでデーゲームを戦うチームもあった。
サッカーのリーグ戦は、すべてが平等な条件で行なわれるものではない。主審の割り当てひとつをとっても、チームごとに様々な思いが渦巻くものだ。少なからず不平等さを内包したなかで、リーグ戦は進行していく。

 今回のスケジュールは、観客動員を意識したものだろう。17日は3連休の最終日なので、外出するにしても昼間のほうがいい──いくつかのデーゲームは、そうした消費者心理を前提にしたと考えるのが妥当だ。テレビ中継との兼ね合いがあるのはもちろんである。

 9月17日の13時04分にキックオフされた横浜FC対松本山雅戦は、真夏のような日差しが照りつけた。直前に降ったゲリラ豪雨が、まとわりつくような湿気を運んでくる。前半の3分の1を過ぎると、選手たちは早くも水分補給に走った。

 前半の残り15分あたりからオープンな展開となったゲームは、松本山雅の奮闘で後半から引き締まった。反町康治監督率いるチームのアグレッシブさが、ゲームを盛り立てた。

 だが、それにしても限界があった。ラスト15分はノーガードの撃ち合いとなり、精度を欠いたシュートが歓声のすぐあとにため息を誘った。

 立て続けにチャンスが巡ってくる攻防は、ストレートな興奮を誘うものである。連休を利用して初めてスタジアムへ足を運んだ観衆にも、それなりの満足感を与えたかもしれない。

 それでも、ヨーロッパのサッカーとの落差に触れると、印象は一変してしまう気がする。
自分があげた歓声よりも、ため息のほうが気になってしまうだろう。たとえば、レアル・マドリード対マンチェスター・シティー戦を、クリスティアーノ・ロナウドの決勝弾を、観てしまったら。

 個々のプレーヤーの水準が、そもそもヨーロッパとJ2では違うと言えばそれまでだ。だからこそ、選手により良い環境を整えることで、ゲームのクオリティーをあげていくべきではないだろうか。

 今回のようなスケジュールは、「選手はタフであれ」といった要求を明らかに超えている。単純に選手が擦り切れてしまうだけだ。

 選手により良い環境とは、責任と自覚を促す環境である。言い訳を排除することにつながる。両チームの監督や選手が持てる力をすべてぶつけ合うことで、少しずつでもレベルは上がっていく。そうした積み重ねが、シーズンを通した成長となるのだ。

 目の前の観客動員やテレビ放映は、もちろん大切だろう。しかし、日本サッカーのレベルアップという大前提を脅かしてはいけないはずだ。恒常的なリーグの繁栄を求めるスタンスを、ゆるがせにしてはいけない。(戸塚啓=スポーツライター)

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