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【コラム】戸塚啓

五輪日本代表 経験を引き継いでいく大切さ

[ 2012年8月31日 06:00 ]

花束を手に最後のあいさつをする関塚監督
Photo By スポニチ

 U-23日本代表の関塚隆監督が、契約満了に伴い退任することになった。

 U-23日本代表の監督は、五輪ごとに交代するのが慣例化している。関塚監督の退任も、規定路線として受け止められている。

 44年ぶりのベスト4進出を果たしたことを理由に、続投させるべきだなどと言うつもりはない。ロンドンでの戦いぶりは胸がすくようなものだったが、望外の結果だったのも事実である。ただ、だからこそ今回の経験を継承していくべきだと思う。

 オーバーエイジの選考はスムーズだったのか。オーバーエイジの招集をめぐるクラブ側との交渉で、何か問題は生じなかったのか。五輪世代の海外組が今後も増えると想定した場合、どのように強化スケジュールを捻り出すのか。

 アジア予選突破後の強化スケジュールは、トゥーロン国際に出場するだけで十分だったのか。五輪世代が代表チームにも招集された場合、無条件で代表を優先するこれまでのルールでいいのか。

 関塚監督とスタッフが悩み、何とかして着地点を見出したこれらのテーマは、後任監督も間違いなく直面する。であれば、今回のスタッフの誰かが引き続き五輪代表に関わり、新監督をサポートしていったほうがいい。継続性を担保したいのである。

 なでしこジャパンの成功を支えたのは、まさに継続性だった。佐々木監督は4年前の北京五輪でもチームを率い、ワールドカップも含めるとロンドンが3度目の世界大会だった。2008年、2010年のU-20ワールドカップでも采配をふるい、熊谷や宇津木、?瀬らは同大会のメンバーである。

 さらに付け加えれば、女子代表を統括する上田栄治技術委員長も、かつてのなでしこジャパンの監督である。いつ、どこで、どのような強化をするべきかという認識を、現場全体が共有できていたのだ。

 メダル獲得にあと一歩まで近づいた今回のチームでは、オーバーエイジの徳永と吉田がチームを下支えした。アテネと北京で苦杯をなめた彼らの存在が若い選手たちを刺激し、チーム全体を引き締めた。

 経験を引き継いでいく大切さは、ロンドンで改めて明らかになった。ならばスタッフも、と思うのである。(戸塚啓=スポーツライター)

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