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【コラム】戸塚啓

槙野 浦和復帰

[ 2012年1月11日 06:00 ]

浦和への加入が内定した槙野智章
Photo By スポニチ

 1FCケルンの槙野智章が、Jリーグに復帰することになりそうだ。浦和レッズへの期限付き移籍が、11日にも発表されるという。

 良い判断だったと思う。

 海外へ移籍した選手から、「試合に出られなくても、練習から学ぶことがある」といったコメントを聞くことは多い。そのとおりだとは思う。ただ、それにしても「期間」や「年齢」というものがある。

 学んだものを実戦で試さなければ、本当の意味で身につかないと僕は思う。今シーズンの槙野の現状は、「練習から学ぶ」という言葉とはかけ離れていたと感じる。年齢的なものもある。24歳という年齢は、もはや若手ではない。10代の選手なら「学ぶ」という感覚もギリギリで理解できるが、槙野は違う。試合でアピールをしなければ、クラブでも代表でも競争から脱落しかねない年齢だ。ザック率いる代表での立場も、ケルンの控えのままでは好転しない。実際に、ザックからは「もっと試合に出ろ」とハッパをかけられていたと聞く。

 海外移籍は片道切符の旅ではない。契約満了を待たずに母国へ戻るのは、ごく当たり前のことである。

 鳴り物入りでJリーグにやってきた外国人で、早々に帰国した選手はいくらでもいる。Jリーグで失敗したものの、ヨーロッパで成功したブラジル人もいる。帰国を恥じることはないのだ。

 入団濃厚と言われる浦和は、前広島のペトロヴィッチ監督が采配をふるう。槙野が再起をはかるには申し分のない環境だ。Jリーグで多いに暴れ回ってほしい。

 このところ報道で名前を聞かなくなった選手、これから海外へ飛び出していく選手も、海外移籍に必要以上の悲壮感を抱かないでほしい。新天地に選んだクラブで思ったような成果をあげられなければ、別のクラブを探せばいい。欧州のクラブ間での移籍がかなわなければ、日本で再度スケールアップをして、再チャレンジの機会をうかがえばいい。それだけの話である。せっかくのポテンシャルを、プライドや意地で眠らせるのはもったいない。(戸塚啓=スポーツライター)

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