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【コラム】戸塚啓

五輪予選で新しい戦力を発見

[ 2011年12月2日 06:00 ]

 11月27日の五輪予選は、大津のために用意されたゲームとなった。唯一の海外組として招集された彼は、バーレーン戦に続いて勝利に貢献した。

 大津のプレーには、それなりのインパクトがあった。積極的な仕掛けと同時に、守備面での奮闘にも好感を抱く。

 ただ、僕自身はシリアのFWにより強いインパクトを受けた。背番号10を着けたオマル・アルスマである。僕がJクラブの強化担当者なら、いますぐにでも調査に乗り出したい。

 1メートル92センチの高さは魅力的だ。長身ゆえに懐が深い。ポストプレーヤーとしての働きが見込めるうえに、足元のボールタッチもなかなかなのである。一度は同点に持ち込んだゴールシーンのみならず、シュートセンスを髄所に感じさせた。

 Jリーグが採用しているアジア枠は、実際のところ「韓国枠」となっている。あるいは、「韓国、ときどきオーストラリア枠」といったところか。東南アジアや中東の選手を、アジア枠を使って獲得するチームは見当たらないのが現状だ。

 韓国人とオーストラリア人に各クラブが触手を伸ばすのは、情報量とその確度が高いからだろう。ひるがえって中東勢となると、絶対的な情報量が少ない。各年代のアジア予選とACLが、アジアの選手を知る数少ない機会となっている。

 中東の選手を獲得するとなると、文化や習慣の違いが横たわる。

 イスラム教徒であれば、一日数回の礼拝が欠かせない。金曜日はモスクに行かなければならないが、Jクラブのホームタウンでそれが叶うのか。ラマダン(断食月)の際には、どうやってコンディションを整えてもらうのか。お互いに困惑する場面がありそうだ。

 そういったことを踏まえても、獲得の可能性を探る価値はある。

 中東から来た選手がJリーグで活躍すれば、Jリーグの放送を検討するテレビ局が、出てくるかもしれない。Jリーグのスポンサーになろうと考える企業が、現われるかもしれない。ヨーロッパの強豪クラブに注がれている“中東マネー”が、日本へ流れてくるかもしれないのだ。

 いずれにしても、オマル・アルスマはJリーグで十分に通用するレベルにある。彼と2トップを組んでいた、18歳のナッスーフ・ナックダリも可能性を秘めている。純粋に戦力として見込める意味で、彼らを迎え入れるクラブが出てきたら面白いと思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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