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【コラム】戸塚啓

残り5試合 J1優勝争い、残留争いの行方

[ 2011年10月20日 06:00 ]

 J1リーグは残り5試合となり、優勝争いも残留争いも混沌としてきた。

 優勝争いは柏、G大阪、名古屋の3チームに絞られただろうか。

 過去5シーズンの優勝チームの勝点を見ると、もっとも少ないのは08年の鹿島の63だった。その他の4シーズンは、いずれも66以上となっている。

 この「66」を目安にすると、首位の柏は2勝1分け2敗の五分で66に到達する。2位のG大阪は3勝2敗、3位の名古屋は3勝1分け1敗がノルマとなる。どのチームにとっても無理な数字ではないだろう。その一方で、勝点52で4位の横浜は、5戦全勝が条件となる。勝点50で5位の仙台は、5戦全勝でも66には届かない。上位3チームとの直接対決はどちらも1試合と、勝点差を一気に縮める好機も限定的である。3強が揃って勝点を伸ばしていけば、優勝ラインがさらに上がることは想定内だ。勝点3差で競り合う3チームのいずれかが、リーグチャンピオンの称号を得るのは間違いない。残留争いはどうだろう。こちらは甲府と浦和によるサバイバルになりそうだ。前節のさいたまダービーで敗れた浦和は、ついに降格ゾーンの16位に沈んでしまった。シーズン序盤にも16位まで順位を下げたことはあるが、当時とはチーム状況が異なる。8月14日の新潟戦を最後にリーグ戦の白星がなく、最近5試合も1分け4敗と足踏みが続く。ナビスコカップ決勝でつかんだ浮上へのきっかけも、ダービーの敗戦で吹き飛んでしまった。J1が1シーズン制となった2005年以降、29節終了時で16位以下だったチームが、残留を果たしたケースはあるのか。該当するのは3チームだ。07年、08年の大宮、それに昨年の神戸である。

 07年の大宮は、29節終了時で勝点27の15位だった。しかし、残り5試合で勝ち点8を積み上げて15位に浮上した。2年続けて残留争いに巻き込まれた08年は、29節終了時点で勝点32の17位だった。ここから3勝2分でシーズンを締めくくり、勝点11を加算する。勝点43の12位でフィニッシュした。昨年の神戸は、ラスト5試合で勝点9を稼いだ。神戸と入れ替わりでJ2へ降格したFC東京は、残り5試合で得た勝点が7だった。こうしたデータを判断材料にすると、浦和がここから残留を果たすには、少なくとも勝点8が必要になる。他チームの結果次第で増減するが、2勝2分け1敗以上の成績が最低限のノルマになるはずだ。大宮とのダービーに敗退した直後、ペトロヴィッチ監督はストライカーの不在を嘆いた。ハーフナー・マイクとパウリーニョが甲府の巻き返しを担っているのに対して、浦和のデスポトビッチはリーグ戦でいまだ無得点だ。「正直なところ、自分たちのFWのポジションの選手を他チームと比べると……。本物のFWが点を取らないと、世界中のどこのチームでも勝つのは難しい」と、思わずこぼしたくなるのも分からなくはない。

 しかし、昨年の神戸にも、得点ランキングの上位に食い込むストライカーはいなかった。ポポの9ゴールがチーム最多である。その彼も、27節の得点を最後にゴールから遠ざかってしまった。チームを残留へ導いたのは、残り5試合で3得点をあげた朴康造、最終戦で2ゴールを決めた吉田らの活躍だった。傑出したストライカーがいなくても、残留を勝ち取ったクラブはあるのだ。決定機を生かせないのはFWの責任だが、結果の責任は全員で背負うべきものだ。J1に踏み止まってきたチームには、そうした一体感があった。残り5試合、浦和の結束力が問われる。(戸塚啓=スポーツライター)

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